「空室のあるマンション」比率に
大きな変動がない理由
住宅取得者の約半数は住宅ローンを利用する。利用者側に「延滞すれば住む家を追い出されかねない」事態を連想させるため、住宅ローンの延滞率はカードローンなどの延滞率を下回ることが一般的だ。
その一方で、管理費・修繕積立金の延滞の増加動向がこれほど明確であれば、住宅ローンだけが無風とはならない。よって住宅ローンの延滞率の動きなどを注視すべきと考えるが、前回も触れたように金利上昇が利用者への返済負担増に直結するため、今後、物件を手放さざるを得ない層が広がる可能性もあろう。
需給動向が価格に直接的に影響を与える点は、マンションの流通価格についても例外ではない。このため、調査結果から空室状況を抽出し、図表1~3同様に完成年度別の切り口かつ、前回・前々回調査との対比を行った[図表4]。
結果は、完成から時間の経った築古物件ほど該当率が高くなるものの、3回の調査については特段大きな動きがない。例えば図表の(5)に含まれる完成年度1994年は、2023年度調査時点の29年前だが、2回前の2013年度調査時点では19年前に当たる。その(5)の割合は、2023年度の調査時点で46.2%であり、2013年度調査時点の54.6%を下回る。
つまるところ、10年古くなったものの、空室率は低下している。また、2013年度調査時点の29年前は1984年となるが、それを含む(3)の53.8%をも下回る。古くなっても、空室のあるマンション割合に変化がない。
4月30日に総務省が公表した2023年10月1日時点の住宅・土地統計調査では、全国の空き家総数が前回の2018年調査から50万7000戸増えて899万5200戸となり、過去最多を更新した。そのうちマンションを含む共同住宅は502万3500戸と55.8%を占めた。空き家自体は増え続けているわけであり、空き家対策に悩みのない地方部の自治体もない。
それなのに、「空室のあるマンション」の比率に大きな変動がない理由は、調査が建物単位で実施されていることにある。図表4で同じ完成年度の区分けに属するマンションであっても、空室があるマンションと満室のマンションの差が広がり、時間の経過と共に前者の空室率が高まっている実情が見込まれる。2023年度の調査結果でも、全室の1割超の空室のあるマンションが全体の4.5%、空室数不明のマンションも10.6%に達している。