JR東日本は変革を急ぐばかりに
利用者を置き去りにするリスクも

 だがそれ以前に、一般利用者の立場からすれば表向きはよく似サービスが、実は異なる思想を持っており、割引などの内容にも違いがあるのは、利用者の理解が追い付くのか少し心配なところがある。

 新幹線乗換駅まできっぷで行って精算し、そこからeチケットを使う割引のメリットと、出発駅から到着駅まで1つのQチケで完結する手軽さのどちらを優先すべきか、デジタル化してなお「手間と割引のトレードオフ」が生じるのは不毛だ。

 既存制度・サービスとの整合性をとろうとするあまり、新しいサービス導入に及び腰になる鉄道事業者が多いだけに、デジタル化に向けてまずは走り出すJR東日本の姿勢は、それはそれで評価されるべきだ。

 だが、「新サービス」は、どんな既存サービスのどこをアップデートしたものなのかを、しっかり丁寧に示さなければ利用者はついてこない。その点については、JR東日本が「変革」を急ぐばかりに利用者を置き去りにしていると言わざるを得ない。

 もっともJR東日本全域でQチケの導入が完了するのは2026年度末のこと。2025年下期に東北新幹線全線と東京都区内が対応するため、この時点で本格的な割引商品が登場するのかもしれない。

 さらに言えば、同じく2026年度末に向けたスケジュールで、センターサーバー式新型Suicaへの更新、近距離向けQR乗車券の導入が予定されており、相互に関係するこれら営業制度とサービス内容が一斉に見直される可能性もあるだろう。