「新幹線eチケットサービス」と
「えきねっとQチケ」の大きな違い

 ただ、2つのサービスには大きな違いがある。きっぷは通常、乗車券と特急券に分かれており、例えば宮城野原~信濃町間を利用する場合、乗車券は同区間、新幹線は仙台~東京間を購入する。東京駅で新幹線の自動改札機を出場する際に乗車券と特急券を投入すると、乗車券のみが出てくるので千駄ケ谷まで使用する。

 これに対して「新幹線eチケット」は、新幹線の乗車券と特急券が一体となった商品のため、仙台~東京間はeチケット利用で、前後区間の宮城野原~仙台間、東京~信濃町間はそれぞれ通常のSuica利用となる。

 新幹線eチケットは一律200円引きとなっているが、乗車券は距離が長いほど割引率が高くなるため、区間ごとぶつ切りにすると割高になることがある。実際、えきねっとの商品説明に「新幹線eチケットサービスと在来線を乗り継いで利用される場合、全区間を紙のきっぷで利用された場合の総額を上回る場合があります」との注意書きがある。

 これをカバーする形で、前日までの申し込みで5~30%の割引が適用される「新幹線eチケットトクだ値」が設定されているが、「えきねっとQチケ」は通常のきっぷと同様、乗車券部分と特急券部分の2階建て構造なのでトクだ値の設定がないのだ。

 JR東日本はQチケを「Suicaエリア外をご利用される方」「新幹線・在来線をまたがってご利用される方」「きっぷをお受け取りされるために遠くの駅までかねばならない方」におススメのサービスと説明している。

 東北地方の在来線は自動改札機が未設置の駅が圧倒的に多く、Suicaが利用可能なのも仙台、秋田、青森、盛岡の都市圏のみだ。みどりの窓口や、きっぷを受け取れる指定席券売機の設置駅もごくわずかで、ICカード・磁気乗車券の両面で不便なエリアである。

 そこでQチケでは、自動改札機未設置駅から乗車する場合はえきねっとアプリ上でセルフチェックインして利用開始し、新幹線では新幹線乗り換え改札口でQRコードを読み込ませる。下車時も同様で、自動改札機のない駅ではセルフチェックアウトを行うという割り切りをした。

 既存乗車券制度の延長線上にあるQチケは、乗車券のみの購入も可能(特急券のみは不可)で、えきねっとで発売されている「在来線チケットレス特急券」と併用ができる。首都圏の在来線特急を、運賃はSuica、特急券はチケットレスで乗るのと同様の利用形態だ。

 言い換えれば、eチケットは伝統的な営業制度上、異質な存在なのだが、海外の特急列車は航空機と同様、運賃・特急料金・設備料金を一体化したチケットを列車単位で設定するのが一般だ。東海道新幹線のチケットレスサービス「スマートEX」「エクスプレス予約」も同様に運賃・料金一体となった新幹線区間打ち切りの商品となっている。

 乗車券部分と特急券部分の2階建て構造が営業制度を複雑化させているとの指摘もあり、営業制度を簡素化していこうという流れの中、業界全体がどのように問題を整理し、対応していくのかは興味深いところだ。