おひとりさまの老後には、現役時代には見えにくい落とし穴がある! それも踏まえた、お金&老後対策は必須です。男性の3.5人に1人、女性は5.6人に1人が生涯未婚と、独身者は急増中ですが、税金や社会保険などの制度は結婚して子どもがいる人を中心に設計されており、知らずにいると独身者は損をする可能性も。独身者と家族持ちとでは、本来お金についても老後対策についても「気を付けるべきポイント」が違います。独身者がひとりで楽しく自由に生きていくためにやっておくといい50のことを税理士の板倉京氏が著した「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」から、一部を抜粋して紹介します。

【絶対やめて!】「介護のために退職します」という人の末路Photo: Adobe Stock

「親も衰えてきたし、会社を辞めようかな」と思ったら

親の介護を理由に会社を辞める人が増えています。
総務省の平成29年「就業構造基本調査」によると、親族の介護をしている人は、全国でおよそ628万人、そのうち、半数以上の約346万人は仕事をしながら介護をしているという結果でした。一方で、過去1年間に「介護・看護のために」前の職を離れた人の数は約9万9000人。この数は今後も増えていくと見られています。

介護離職するケースで多いのは、介護を自宅で行う場合です。「他人に面倒を見られるのを嫌がる」「介護をすべて外注に頼むほどの金銭的余裕がない」場合、家族が介護にあたることになりますが、配偶者がいない、または配偶者が高齢で老老介護になってしまう、といった場合には子どもが介護を担うこともあります。ここで問題なのは、介護をうまく分担できずに1人に負担が集中してしまうこと。結果、介護離職を余儀なくされてしまう人がいるというわけです。前回説明した通り、親の介護は「独身者」にお鉢が回ってくることが多いので、独身の方は特に気をつけなければなりません。

「介護離職」は、実はイバラの道

もしかしたら、深く考えずに「今の仕事も辞めたいし、親のお金で暮らせるならいいか」と介護離職してしまう人もいるかもしれません。でも、介護は子育てと違って期限はありませんし、状態がよくなることも、ほぼありません。

「介護と仕事の両立が大変だから」といって、介護離職をしてしまうのはリスクでしかありません。
介護離職によってもたらされるリスクは、「収入が減少する」「介護以外に自分の時間がとれない」「再就職が難しい」などなど、盛りだくさん。
会社を辞める、ということは毎月のお給料がなくなるのはもちろん、早く辞めてしまうことで退職金や将来もらえる年金も減ってしまうということ。

介護のあとの再就職も簡単ではありません。もし、再就職できたとしても、離職前のような条件の仕事には、まずつけないと考えておいた方がいいといえます。
また、辞める前は「親のお金で生活できるし、介護保険もあるから、自分が働かなくてもなんとかなる」と思っても、紙おむつや防水シーツなど細々とした介護用品も必要となり、介護離職後に「想像以上に費用がかかってきつい」と感じる人は少なくありません。
このように「介護離職」することで、収入が減り、支出は増え、自身の老後資金の備えが不十分になってしまうというリスクも考えられるのです。

介護をしたから相続できるお金が増えるわけではない

「うちの親は比較的裕福だし、介護をした分、相続でたくさんもらえれば大丈夫」と考える人もいるかもしれません。しかし、実際はそうはいかないことが多いというのが私の実感です。

相続は介護をした人もしなかった人も、基本は同じ取り分です。それどころか、「介護中に親の金を勝手に使い込んだのではないか」とあらぬ疑いをかけられたり、「介護といっても大したことはしていなかったじゃないか」、など、介護をしたことが泥沼の相続争いに発展する原因になることだってあります。

仕事と介護の両立は大変ではありますが、働き続けていれば、仕事をしている間は介護から離れた自分の時間を持つことができます。しかし、「介護離職」してしまうとそうはいきません。精神的に追い詰められて、強いストレスを感じたり、うつ状態になってしまい、介護放棄などにつながるケースも多いと聞きます。
しつこく言ってきましたが、とにもかくにも、「介護離職はすることなかれ」です。

*本記事は、独身者向けのお金&老後対策を書いた、板倉京著「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」から、抜粋・編集して構成しています。