おひとりさまの老後には、現役時代には見えにくい落とし穴がある! それも踏まえた、お金&老後対策は必須です。男性の3.5人に1人、女性は5.6人に1人が生涯未婚と、独身者は急増中ですが、税金や社会保険などの制度は結婚して子どもがいる人を中心に設計されており、知らずにいると独身者は損をする可能性も。独身者と家族持ちとでは、本来お金についても老後対策についても「気を付けるべきポイント」が違います。独身者がひとりで楽しく自由に生きていくためにやっておくといい50のことを税理士の板倉京氏が著した「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」から、一部を抜粋して紹介します。

【親と同居中のおひとりさま、必読!】医療費などの自己負担額が大幅に減る裏ワザとは?Photo: Adobe Stock

「世帯分離」するだけで介護や医療の自己負担額が引き下げられる可能性

親と同居している独身者に、是非、検討していただきたいのが本書でも説明している「世帯分離」です。世帯分離とは、同じ住所で暮らす家族が、世帯を分けて住民票を登録すること。
世帯分離すると、親の医療費や介護費用の自己負担額を引き下げられる可能性があるからです。

65歳以上の人が要介護状態になると、介護保険制度の介護サービスを利用することができますが、そのうち自己負担額は1~3割です。自己負担額は、所得が多い人ほど高く、所得が低い人ほど低く設定されていますが、この所得は、介護を受ける本人の所得だけではなく、世帯の所得で決まる場合があります。

また、ひと月あたりの負担限度額が決められている「高額介護サービス費」という制度があり、限度額を超えた部分は還付してもらえるのですが、これも世帯の所得によって負担限度額が変わる可能性があるのです。

世帯を分けて登録するだけで年間35万円差も!

仮に、親の収入が国民年金のみ年間80万円以下といった場合、単身世帯であれば月々の介護費用の負担限度額は、1万5000円です。しかし、所得のある人と同世帯にしていた場合(世帯分離していない場合など)は、負担限度額が4万4400円となり、ひと月で2万9400円、年間で35万2800円もの差が出る可能性があるのです。

つまり、同じ家で暮らしていても、親と子の世帯を分けて登録するだけで、自己負担を減らせる可能性があるということ。
また、老人ホームなどの施設に入所する際も、所得が低い人ほど居住費や食費の負担が低くなっていますから、これらの費用を軽減できる可能性もあります。
介護は長丁場ですし、いつまで続くかわかりませんので、抑えられる費用は抑えていきたいところです。

世帯分離することで、医療費の自己負担も下げられる可能性があります。
一定以上の医療費を利用した場合に、上限を超えた部分を返金してくれる「高額療養費制度」という制度があります(p168参照)。こちらの限度額も所得によるので、世帯分離をすれば、所得の低い人の医療費の自己負担限度額を下げられる可能性があります。

また、介護保険と医療保険の「高額介護合算療養費制度(高額医療合算介護サービス費)」といって、介護費用と医療費の合計額が上限を超えた部分を返金してくれる制度もあり、これも年間10万円程度負担が変わる可能性もあります。
また、75歳以上の人が加入している「後期高齢者医療保険」の保険料を2~7割下げられる可能性もあります。

このように、「世帯分離」は、さまざまな自己負担率に関わってくる大きなポイントなのです。

市区町村にまずは確認を!

ちなみに、「世帯分離」をするメリットが受けられるのは、親の収入が少ない場合です。

介護サービスを2人以上で受けている場合などは、世帯分離をすることで逆に負担が増えてしまうこともあります。また、国民健康保険に加入している場合は、保険料が変わる可能性があるなど、世帯分離はいろいろな事柄に波及してきます。

実際に世帯分離を検討する時は、分離した場合の保険料や様々な負担の増減、利用できる制度などについて、お住まいの市区町村に確認してみてください。

 *本記事は、独身者向けのお金&老後対策を書いた、板倉京著「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」から、抜粋・編集して構成しています。