「お客様を感動させるのは、サービスではなくホスピタリティです」
そう語るのはアメリカン・エキスプレスの元営業である福島靖さん。世界的ホテルチェーンのリッツ・カールトンを経て、31歳でアメックスの法人営業になるも、当初は成績最下位に。そこで、リッツ・カールトンで磨いた「目の前の人の記憶に残る技術」を応用した独自の手法を実践したことで、わずか1年で紹介数が激増。社内で表彰されるほどの成績を出しました。
その福島さんの初の著書が記憶に残る人になるガツガツせずに信頼を得るための考え方が満載で、「本質的な内容にとても共感した!」「営業にかぎらず、人と向き合うすべての仕事に役立つと思う!」と話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、リッツ・カールトン時代に気づいた「人が感動するメカニズム」について紹介します。

お客様が静かに離れていく「頼まれたことをやるだけの人」が知らない、相手を感動させる「ホスピタリティ」の意味とは?Photo: Adobe Stock

感動が生まれる「仕組み」

「人はどんなときに感動するんだろう?」

 リッツ・カールトンで働いていた6年間、僕はつねに考えていました。

 わかったのは、感動とは「期待とのギャップ」だということです。
 お客様の感動は与えた価値の大きさではなく、その意外性によって決まるのです。

「サービス」と「ホスピタリティ」の違い

「サービスとホスピタリティの違いはなんですか?」

 セミナーや講演で、よくいただく質問のひとつです。似た印象のある言葉ですが、僕のなかでは明確に定義があります。

 サービスは「約束を果たす」こと。
 ホスピタリティは「勝手に行う」ことです。

 たとえばレストランに行き、メニューにある「ジントニック」を頼んだとします。そして、ジントニックが出てくる。これがサービスです。

 一方で、ホスピタリティは違います。
 約束もしていなければ、お客様から頼まれたわけでもありません。でも喜んでもらいたいから、やることです。たとえばリッツ・カールトンなら、お客様の名前や趣味を覚えたり、お誕生日だとわかればデザートプレートに「Happy Birthday」と書いてお出ししたりします。

リスクをとって、行動しよう

 言われたことだけやる、つまりサービスすることには、リスクはありません。ほぼ確実に相手に喜んでもらえます。
 ですが予想を超えた感動をもたらすこともできません。

 一方でホスピタリティは、ときには「余計なことをするな」と言われ、裏目に出ることもあります。
 ホテルマンとして未熟だった頃、甘いものが苦手なお客様にサプライズケーキを出して怒られたこともあります。同僚に聞いたら、みんなはそのお客様が甘いものが苦手なのを知っていました。だから僕のやり方はダメでしたが、「お客様に何かしたい!」という気持ちは間違っていないと、上司は言葉をかけてくれました。

 やらないよりも、やることで「リスク」が生じます。それでも自分がそうしたいと思ったから「やる」。これがホスピタリティです。

 その挑戦が、予想を超えた喜び、つまり動を生み出します。どんな仕事においても相手を感動させるには、まずはこちらから「なにかしてあげたい」と思う気持ちが重要なのです。

(本稿は、『記憶に残る人になるートップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』から一部抜粋した内容です。)

福島 靖(ふくしま・やすし)
「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。高校時代は友人が一人もおらず、18歳で逃げ出すように上京。居酒屋店員やバーテンダーなどフリーター生活を経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。当初は営業成績最下位だったが、お客様の「記憶に残る」ことを目指したことで1年で紹介数が激増し、社内表彰されるほどの成績となった。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。38歳で株式会社OpenSkyに入社。40歳で独立し、個人事務所を設立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。