犯罪スレスレの迷惑行動を繰り返す
“神様扱い”してはならない客の特徴

 続いて、クレーム対応に真面目に取り組む人が、予期せぬトラブルに巻き込まれたケースをご紹介します。

 ある役所に男性の利用者からクレームが入りました。

 窓口の女性職員が懇切丁寧に対応したところ、利用者は親切な対応に大変満足し、それ以降、何かとその女性職員を指名しては頼るようになりました。

 彼女が別の利用者の対応をしていると、「あの女性職員でないと、話にならない」などと、窓口で騒ぎ立てるため、役所も困り果て「あの利用者は、彼女に任せよう」と、その女性職員を専属対応者とするようになりました。

 女性職員は、内心ではこの状況を苦痛に感じていましたが、プロ意識の高さや公務員であるという使命感から、「もし対応を断れば、住民(お客様)を選別してしまうことになる……」と周囲の同僚に悩みを打ち明けませんでした。

 嫌な表情を見せず、他の方と同じように、平等に笑顔で接し続けていたところ、この男性利用者は「きっと彼女も僕と話したいのだろう。公務員なんだから、住民と話すのも立派な仕事だし、事務作業をしているより僕と雑談しているほうが絶対に楽しいはずだ」と思い込んでしまい、長時間、女性職員を捕まえては業務に関係ない話を延々と続けるようになっていったのです。

 第三者からすれば「それはもうストーカーでは……」と心配になる事例ですが、住民の利益のためにある役所という特性から、現場で「それは迷惑行為である」と判断することができませんでした。結果として、この女性職員は心を病んで休職してしまいました。

 以上の2つの事例から分かるように、クレームごとに適切な対応をとらなければ企業・組織は従業員を守ることはできません。

「お客様は神様です」という姿勢で、全てのクレームに対していつも同じく真摯な対応をしなければならないという時代は終わりました。

 クレーム対応は、新時代に入ったのです。

想定外のクレームや言動で
疲弊する担当者たち

 近年、多種多様なクレームが増えています。

 商品やサービスについての問題に対して正当な要求をする「一般クレーム」、問題があったとはいえ要求内容や手段が常識的な範囲を超えている「ハードクレーム」、ハードクレームにさらに悪質な言動が伴う「カスタマーハラスメント(通称“カスハラ”)」など。

 想定外のクレームや言動を受けることも多く、クレーム対応を担当する部署をはじめ、接客対応をする従業員はかなり疲弊しています。

図表:新時代のクレーム対策同書より転載 拡大画像表示