現場スタッフだけではなく
組織全体で解決すべき問題

 私は、日々、規模の大小を問わずさまざまな企業や官公庁でクレーム対応についての指導と研修を行っています。

 指導と研修は、現場スタッフに対するもの、組織の管理部門に対するもの、経営陣に対するもの、と立場・役割に応じて別々に行います。

 なぜなら、それぞれすべきこと、見るべきことが違うからです。

 ただし、それぞれがバラバラにやるべきことをしたとしても、今の時代のクレームには対応しきれません。お互いの状況、抱える問題点を共有した上で、対応方針を共通にして組織一丸となって取り組む必要があります。

 現場スタッフは、クレームを申し出てきた人に対して組織の方針に則り間違いのない対応をする一方で、組織は、現場の状況を鑑みてスタッフ・組織を守るための対応方針の決定、ルールと環境の整備を徹底すること。さらに、時代、状況に応じてクレーム対応の方針をアップデートしていくことが求められます。

 2022年に任天堂が、修理サービスに関する規程に「カスタマーハラスメントについて」という項目を追加し、脅迫行為や屈辱発言、長時間の拘束などを例に挙げ、交換や修理を断る場合があると公表しました。従業員からは「毅然と対応できるようになった」「組織が守ってくれると思えるようになり、安心感が得られた」などの声が多く上がっていることからも、一定の成果は出ているようです。

 この規程は、2022年2月に厚生労働省より発表された「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参考としています。各自治体でもこの問題に取り組みはじめており、2024年には東京都が、「カスハラ防止条例」を制定すると公表しました。

 いまやクレーム対応は、現場だけでなく組織全体が一丸となって取り組んでいくべき問題であることを認識し、協同態勢がしっかり機能することではじめて、現場スタッフ・組織を守ることができます。また、本来商品やサービスを届けたいお客様への対応にリソースを集中させることで、顧客満足にもつながるのです。