新しもの好きはごく少数派
「情弱」な保守層が半数を占める

 しかしながら、AIの全てを「神話」だと断定するのもまた問題です。

 新しい技術とはその真価が理解されにくいものであり、そのために過剰評価されることもあれば、過小評価されることも世の常です。そもそも社会とは急な変革には対応しきれないものですので、当然ながら新しい技術については、真っ先に適応する人もいれば、大多数が適応してからようやく追随する人も出てきます。

図表:新技術への態度の違い同書より転載 拡大画像表示

 革新的サービスを起こす「イノベーター」層は全体の2.5%程度、そのサービスに真っ先に飛びつく「アーリーアダプター」層は全体の13.5%程度と言われ、このあたりの層に普及したサービスは、その後爆発的なブームになるケースがあることが知られています。

 一方で新技術やサービスをなかなか採用しない「レイトマジョリティ」といわれる層や、「ラガード」と呼ばれる普及しきったサービスであっても頑固に採用しない層も一定数いると言われています。

 これは現実にそうなっているというだけで、どちらが良い悪いという話ではありません。新しい技術を採用するかどうかだけでも、これほど人によって態度に違いがあることは、誰もが知っておきたい知識だと思います。

 ところが、自分がイノベーターであれ、アーリーであれ、レイトマジョリティやラガードの存在を忘れて「自分が気に入っているから他人も気に入るはずだ」「自分が嫌なものは他人も嫌なはずだ」と決めつける傾向があります。

 こうした傾向のことを「投影バイアス」と呼んでいます。

【投影バイアス】Projection bias
 自分と同じように他の人も考えるはず、相手も自分の意見に同意するはずだと、自分の考えを他人に投影する傾向。相手の考えを理解するのではなく、自分の考えを相手に押し付けてしまう。

・具体例
「女性は産む機械」「知恵を出さないやつは助けない」「私はすごく物分りがいい、すぐに忖度する」といった「政治家の失言」は「みんな自分と同じ考えだ」と思い込んでいるためになされるので、少なくとも発言した本人ははじめ「失言だと思っていない」のだと思われます。