2回目のフライトでさまざまなミッションを成功させ
達成感を得る

宇宙飛行士・野口聡一さんが「宇宙に行ったなんてすごいですね」と言われるたびに内心感じていたことどう生きるか つらかったときの話をしよう』(野口聡一 著、アスコム、税込1540円)

 もっとも、周囲からの期待と自分の実感の間にギャップを覚えたり、ひけめを感じたりしつつも、このときの僕はさほど深く悩みはしませんでした。

 すぐに、次のフライトの準備が始まり、「次の訓練で忙しいから」と取材を断ったり、「新しい目標に向かって走っている」という気持ちによって自分を支えることができたりしたためです。

 もちろん、最初のフライトの後に感じた違和感が解消されたり解決したりしたわけではありませんが、新しいミッションを与えられ、そこに集中していたせいで、自分と向き合うことなく時間が過ぎていきました。

 2回目のフライトは2009年12月。

 高度400kmの軌道を周回する宇宙の実験施設、国際宇宙ステーション(ISS)への長期滞在クルーに選ばれた僕は、スペースシャトル「ソユーズTMA-17」に乗って宇宙へ飛び立ち、2010年6月に地球へ帰還しました。

 ISSは、アメリカの呼びかけに応じ、日本、欧州、カナダが共同で構築・運用している施設であり、宇宙飛行士が生活する居住モジュールや、さまざまな化学実験を行う実験モジュール、船外実験施設など、各国が開発したさまざまな部位が組み合わさった構造になっています。

 約5か月半の滞在期間中、僕はISSの各部および日本実験棟「きぼう」のメンテナンスや各種実験を行い、Twitterによる情報発信や、現地で撮影した画像・動画の発表も行いました。

 2回目のフライトが終わったとき、僕は大きなものを成し遂げた、やりきったという思いに満たされていました。

 日本が威信をかけて作り上げた「きぼう」でさまざまなミッションを成功させ、かつ日本人宇宙飛行士として最多の滞在日数や船外活動を記録したためです。

「いつの間にか山のてっぺんに立っていた」。

 偉そうだと思われるかもしれませんが、そんな感覚がたしかにありました。