2022年12月に刊行された『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』は、学習参考書として「史上初」となる「2023年 日本で一番売れた本(年間総合1位)」を獲得した(日販調べ)。年間で、約7万点もの新刊書籍が刊行されるなか、なぜ、小学生向けの学習参考書が、年間総合1位になったのか? 本書の著者に、その理由を伺った。

『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』が、「2023年、日本で一番売れた本」になった理由を再考してみたPhoto: Adobe Stock

年間総合1位は、当然、関係者皆様の力の結集

最初に強調しておきたいのは、本書が年間総合1位になったのは、自分だけの力では当然ないということです。担当編集者さんをはじめとした出版社の方々、本の制作に携わってくださった方々、取次会社や書店の方々、これらの皆様の「総合力」としての結果であるということです。

また、この記事の読者には、実際に本づくりに関わっておられる方々も少なくないと思います。そのため、「どうやって、ベストセラーにすることを目指したか」という視点からも、本書について再考し、有用な記事になれば幸いです。

結論から言うと、本書がベストセラーになった要因は無数にあります。そのため、すべてについて、ここで言及することはできないのですが、主だった理由を述べていきます。

「できないこと」と「できること」のギャップを広げる

「できないこと」が「できる」ようになることは、年齢問わず、嬉しいものです。ここで、本書のタイトルを再度みてください。

『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』

このタイトルをみて、多くの人が「そんなのできるわけない」と思うでしょう。でも、タイトルに偽りがないよう、本当に1日でできるような本の構成を考え抜きました。

その結果、刊行後、読者の方々から「本当に1日でできた!」「1日どころか数時間でできて、子どもがすごく喜んでいる!」というような嬉しい感想がたくさん届きました。

ところで、「できないこと」が「できる」ようになる本は、世の中にたくさんあります。大事なのは、「できないこと」と「できること」のギャップを大きくすることです。

「1日で19×19まで暗算なんて絶対できない」
 ↓実際に試してみる
「あれ、ほんとにできちゃった! すごい!」

ここには、大きなギャップがあります。このギャップが広いほど、読者の喜びも大きくなり、感動してもらえる本になり、その結果、口コミの広がりなども期待できるようになります。

対象世代が広くなる可能性をもたせる

小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』というタイトルの通り、この本は小学生向けに書いた本です。

制作前に、「脳トレをしたいシニア層」も読者対象として、一定数想定していましたが、個人的には「1割くらいかな」と思っていました。

でも、実際に販売されてから、購入者の、実に3割以上がシニア層であるというデータが出て驚きました。多くのシニア層の方々が、脳トレを目的として手に取ってくださっていたのです。ここから導ける教訓は何でしょうか?

ある世代を主な読者対象として本をつくるとしましょう。すべての本に応用ができる方法ではありませんが、「もしかしたら、別の世代にも広がるような工夫、しかけ」を、コンテンツとして入れておく、という方法は考えられます。

例えば、本書では、もともと親御さん向けのコラムを掲載していたのですが、シニアの方が本書に取り組むときに、そのコラムが知的好奇心やモチベーションを刺激する内容になっていた可能性などは考えられます。

実際は他にも、さまざまな工夫を考えてつくったのですが、上記2点は、今まで、ここまで詳しく言語化したことがなかったので、有益なことが1つでもあれば幸いです。これからも、細々とではありますが、読者の方々のお役に立てる本を書いていければと思います。

※本記事は、『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』の著者が書き下ろしたものです。