「弱みは隠すよりも、むしろアピールした方がいいと思います」
そう語るのはアメリカン・エキスプレスの元営業である福島靖さん。世界的ホテルチェーンのリッツ・カールトンを経て、31歳でアメックスの法人営業になるも、当初は成績最下位に。そこで、リッツ・カールトンで磨いた「目の前の人の記憶に残る技術」を応用した独自の手法を実践したことで、わずか1年で紹介数が激増。社内で表彰されるほどの成績を出しました。
その福島さんの初の著書が記憶に残る人になるガツガツせずに信頼を得るための考え方が満載で、「本質的な内容にとても共感した!」「営業にかぎらず、人と向き合うすべての仕事に役立つと思う!」と話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、自身の弱みを「強み」に変えた考え方について紹介します。

「どうすることもできない過去」にクヨクヨ悩まない人だけが知っている、自分の弱みを「強み」に変える考え方Photo: Adobe Stock

「事実」と「解釈」

 僕の最終学歴は「高校卒業」です。

 一方で、同僚は高学歴の人が多く、お客様もほとんどが大卒です。バーテンダーをしていた20代の頃には、交際していた女性のご両親に、学歴と職業を理由に交際を猛反対されたこともあります。

「ちゃんと大学に行っていれば……」と、何度も後悔しました。たかが学歴ですが、僕にとって克服することのできない大きなコンプレックスだったのです。

 ですが、「事実」と「解釈」は異なります。

「高卒か、大卒か」という違いは、たしかに事実です。「偏差値の違い」があることも事実です。

 でも「高卒は劣っている」というのは、ただの解釈です。

 事実は変えられなくても、解釈は変えられます。

 誰かと違うというのは事実だったとしても、それを「劣っている」などと決めつける必要はありません。自分のとらえ方しだいで、いかようにも変えていけます。

「弱点」とは「違い」である

 とらえ方を変えたことで、僕の「高卒」という弱点は強みに変わりました。

 なぜなら弱さがあるということは、他人とは違うものを持っているということだからです。これまで何度もお伝えしてきましたが、他の人と「違ってこそ」なんです。まったく同じだったら、お客様の記憶に残ることなんてできません。

「高卒」だと明かすと、その時点でお客様は少し興味を持ってくれます。

「高卒から、どうやってアメックスに入れたの?」

 そんなふうに、前のめりになってくれます。

「じつは地元で友達に恵まれなくて、単身、上京してきたんです。18歳から働いていて、これまで飲食店、バーテンダー、そしてホテルマンなどを経験してきました」

 と、そこからさまざまな経験や想いをお伝えできます。

 他人と比べて優れているか、劣っているかなんて、どうでもいいんです。「違いがある」ということ自体が、何よりの「強み」なのです。

「弱点」の解釈を変えてみよう

 考えが広がりすぎて、整理して話すのが下手。
 内向的だから、積極的に強い提案ができない。
 別の業界から転職したから、専門知識がない。

 こういったことは、ただの「違い」です。

優秀でいようとして鎧を着込むことは、こういった個性や特性に「劣っていることだ」「隠すべきものだ」とレッテルを貼り、閉じ込める行為です。

 そんな認識を変えて、ただの違いとして受け止めてみてください。

 考えを広げられるから、いろんな視点で考えた意見をお伝えできるかもしれない。
 内向的だから、お客様が安心して自分の話をしてくれるかもしれない。
 専門知識がないから、お客様にもわかりやすく説明できるかもしれない。

「その違いには、どんな強みがあるんだろう?」

 そんなふうに逆の発想で考えてみると、隠してしまいたいと思っていた弱みからも強みが見つかるかもしれません。

「弱み」とは、磨けば輝く「強み」の原石なのです。

(本稿は、書籍『記憶に残る人になる』から一部抜粋した内容です。)

福島 靖(ふくしま・やすし)
「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。地元の愛媛から18歳で上京。居酒屋店員やバーテンダーなどを経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。お客様の記憶に残ることを目指し、1年で紹介数が激増。社内表彰されるほどの成績となった。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。株式会社OpenSkyを経て、40歳で独立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。