実際には、これはYahoo! JAPANに限った話ではない。アメリカのLA TimesやNew York Daily News、The Chicago Tribuneなども、2018年にGDPR(General Data Protection Regulation、EU一般データ保護規則)が施行された当初はヨーロッパからのアクセスをブロックせざるを得なかった。しかし、現在はGDPRに準拠するようにプライバシーポリシーを強化し、アクセスを再開している。

 Yahoo! JAPANは、なぜこれらのメディアのようにアクセスを再開できないのか? 確かに、英語のメディアがヨーロッパ諸国でも十分な読者を得られるのに対して、日本語のメディアは在欧日本人や渡航中の日本人観光客にしか読まれず、GDPR準拠のための改修コストを正当化できない面があるだろう。だとしても、ヨーロッパでも日本でも個人データの重要性に違いはない。今後、さらにプライバシーに関する意識が高まるとすれば、国内向けにも同等の基準を満たして、どこの自由諸国からでもアクセスできるようにしておくことが、メディア企業の責務になっていくように思う。

プラハの街で見かけた、VRゴーグルを着けて街を歩く一団

 そこで、以前から気になっていた、Webサイトにおけるクッキー利用許可の違いを掘り下げてみることにした。ご存知のように、この場合のクッキーとは、Webサイトを訪れたユーザーの設定や活動を記憶するための仕組みで、ログイン状態を維持したり、アクセス解析や広告効果の測定などに使われるものだ。

 たとえば、プラハの街頭で意外に感じられたことの1つに、VRゴーグルを装着した一団との遭遇があった。美しい街並みを、わざわざVRゴーグルを通して見なくてもと思ったが、調べてみると、彼らはVRGUIDE.MEなどのガイドツアーの参加者で、プラハの歴史的な記憶を実際の風景に重ねて追体験しているのだった。そのVRGUIDE.MEのサイトにアクセスしたときにも、最初に表示されたのは、クッキー利用に関する許可を得るためのダイアログである。

プラハの観光スポットで遭遇したVRゴーグルの一団 Photo by O.K.プラハの観光スポットで遭遇したVRゴーグルの一団  Photo by K.O.
彼らは、戦争の傷跡など、プラハの歴史的な街の記憶を実際の観光スポットと重ねて追体験していた(Photo : VRGUIDE.ME)彼らは、戦争の傷跡など、プラハの歴史的な街の記憶を実際の観光スポットと重ねて追体験していた Photo  VRGUIDE.ME 拡大画像表示