そして、2つ目のポイントは「日課・ルーティンの回復」。

「避難所や難民キャンプでは、それまでの生活リズムが急に崩れます。イレギュラーな状況でも、毎日同じ時間に子どもの居場所に行き、遊んだり学んだりする“日課”があるなどの基本的な支援が、彼らの心の安定にもつながるのです」

 幼い子どもが、自らに起きた事象を正確に理解するのは難しい。彼らの不安を少しでも和らげるためにもルーティンの回復は必須だという。

子どものための
心理的応急処置とは

 そして3つ目のポイントは「子どものための心理的応急処置の提供」だ。子どものための心理的応急処置とは、緊急時に大人が子どもの心を傷つけずに対応するための「行動指針」を指す。Psychological Firtst Aid for Children(通称:PFA)と呼ばれ、セーブ・ザ・チルドレンでは世界保健機関(WHO)が開発したマニュアルを基に、より子どもに特化したマニュアルを制作したという。

「PFAは支援スタッフだけでなく、親や養育者など誰でも行える“子どもの心の応急手当て”です。『見る・聴く・つなぐ』という行動指針をもとに、子どもたちの支援を行います。1つ目の『見る』は、重傷を負い、緊急医療、水や食料が必要な子どもや家族がいないかの確認です。また、避難所の隅でずっと座っていたり、極端に元気がなかったりと、さらなるケアや特別な注意を要する人がいないか、周囲をよく見守ってください」

「見る」によって、心のケアが必要な子どもを見つけたら、落ち着いて話しかけて彼らの声を「聴く」。相手が不安に思っていることやニーズに耳を傾け、気持ちを落ち着かせる聴く方法だ。

「被災地で交流した子どもたちは『地震の夢を見るから怖くて眠れない』『一番仲の良い友だちが津波に流されてしまった』など、さまざまな不安や悲しみを抱えていました。そのひと言ひと言に耳を傾け、気持ちを落ち着けるよう手助けをするのが、PFAにおける『聴く』という方法です。ただし、心の準備ができていない相手に、起きた出来事を事細かに尋ねるのは絶対にNG。無理につらい記憶を呼び起こすことで、子どもの不安などを増長するリスクがあります」