10年連続で算数オリンピック入賞者を輩出している彦根市発の知る人ぞ知る塾「りんご塾」。天才を生み出すそのユニークな教育メソッドを、塾長の田邉亨氏が初公開した書籍『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(ダイヤモンド社刊)が、このたび発売になった。本書を抜粋しながら、家庭でも取り入れられるそのノウハウを紹介する。

【算数オリンピック入賞者輩出の塾長が語る】子どもの「なんで勉強しなきゃいけないの?」に親はどう答えるべき?Photo: Adobe Stock

「なんで勉強しなきゃいけないの」と言わせたら「負け」

 りんご塾を始める前に、とある塾で講師をしていたとき、子どもたちから何度か聞かれたことがあります。
「なんで勉強しなきゃいけないの?」と。

 この本を読んでいるあなたも、一度は聞かれたことがあるかもしれません。
 子どもがこれを聞いてくるということは、少なくともその相手(塾の講師である私や、親であるあなた)を信頼しているからだと思います。答えをくれたり、気持ちをわかってくれたりすると信じているのです。

 だから私は、気持ちに応えるために真剣に考えました。
「シンプルな答えとしては、『生きていくために必要だから』になるけど、子どもが求めているのは、そういうことではないだろう」

 そして、次のような思いに至りました。
 質問の真意は、「学校や塾の教材や授業が面白くない」という訴えなのだと。

「楽しい」と思える環境をつくることが指導者や親の使命

 例えば、恋人同士が「なんで私たちって付き合ってるんだろうね」と言っていたら、その関係は末期です。楽しいときは意味なんて考えません。相手と過ごす時間そのものに意味があるからです。

 だから、子どもたちが「なんで勉強しなきゃいけないの?」と聞くということは、勉強することに意味を見いだせず、夢中になれていないということ。すなわち「教材や授業が面白くない」ということなのです。

 自分が退屈させてしまっている、夢中にさせてあげられていない……。子どもたちに申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。完全に私の負けです。

 だから、自分が将来作る塾では、夢中になって解ける問題を提供して、達成感を感じてほしいと強く思いました。それが、塾や指導者の最大の仕事ですし、そういう環境を与えてあげることが親の使命なのではないでしょうか。

*本記事は、『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(田邉亨著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。