夏休みが終わればいよいよ入試に向けての仕上げの時期にはいってきます。どのようにして最終的な志望校を確定するのか、過去問はどのように進めればよいのか? 塾がお膳立てしてくれる最難関校はともかく、それ以外の学校を志望している子の親御さんは意外に情報がないといいます。子どもを本当に伸ばしてくれる志望校の見極め方や選び方、その志望校に合格するための効果的な「過去問対策」をやり方を、大人気プロ家庭教師の安浪京子先生が詳細に説明した『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』から抜粋して、そのノウハウの一部をご紹介します。

【中学受験のカリスマ家庭教師が教える】超重要! 過去問を始める時期を間違ってはいけないPhoto: Adobe Stock

間違った時期に始めると、意味がないことも

過去問を始める時期は、非常に重要です。

お子さんの仕上がり具合にもよるため、一概に「○ヵ月前から」とは言えませんが、小学校と塾に通いながら過去問に取り組む時間を捻出するのはかなり大変なので、入試の3ヵ月前には志望校の過去問で、ある程度点数が見込める程度に「仕上がりつつある」(本書P.212参照)のが理想的です。

第一志望の入試が1月中旬であれば10月くらい、2月上旬であれば、11月くらいになりますが、実はそのような状態のお子さんは半分もいません。

過去問は志望校対策や本番を想定するなど非常に大切なツールですが、中でも「本番にピークをもってくる」ために使うことを常に念頭におく必要があります。過去問を始めると、お子さんも「いよいよ本番が近い」と気持ちが高まってくるものです。しかし、その気持ちはそれほど続きません。

過去問のスタートは早ければいいというわけではない

困ってしまうのは、6年生の夏頃から第一志望の過去問を新しい年から順番に解かせる方針の塾や先生です。

志望校のレベルや出題傾向をざっくり把握するために、試しに解いてみるという使い方ならまだわかりますが、夏の時点では、塾はカリキュラムを一通り終えただけで、志望校対策はまだ始まっていません。このような状況下で過去問の点数が取れるわけはありません。特に第一志望は厳しいのが普通であり、夏の時点で2~3割取れていれば御の字です。

しかし、この時期に過去問を解かされ、思ったような点が取れず落ち込んでしまう子がたくさんいます。過去問のスタートは、早ければいいというわけではありません。

私が過去問のGOを出すタイミングは、志望校の過去問で受験者平均ぐらいは取れるまで力がついたと判断できた時です。
基礎力の徹底はもちろん、志望校の頻出分野対策をしていない状態で過去問を解かせることはまずありません。頻出分野対策は秋から始めるので、私の教え子が過去問を解く許可をもらえるのは前述のように2~3ヵ月前となります。志望校対策のやり方は、本書でも解説していますので、ご家庭で取り組んでください。

塾の方針よりも子どもの状態を見て決める

K君のお母様から「算数の過去問が全然点数が取れないんです」という相談を受けたのは9月。
「今の時期に取れないのは当たり前なんだけど……」と思って臨んだカウンセリングで驚愕しました。

塾からの指示で、第一志望の過去問を赤本一冊すべて解き終わってしまっていたのです。しかも、その後も毎週第二志望、第三志望を順に一年ずつ解いて提出というスケジュールが組まれており、それに沿って過去問を提出しないと怒られる、とのことでした。

当然点数はボロボロで、合格最低点に遠く及びません。算数は、志望校で毎年出題される「速さ」と「立体切断」の大問をどの年も丸ごと落としており、必ず正解させねばならない大問1の小問群もポロポロと落としています。

そこで、まずは『四科のまとめ 算数』(四谷大塚)を使って小問を固め直し、速さ、立体切断を徹底的に練習するよう指示しました。これをせずして点数が取れるはずがありません。そして、その後に過去問に戻るよう、指示しました。「もうすべて過去問はやってしまったのですが……」と不安がるお母様に、「8月に解いた過去問の内容など12月には忘れていますので、何も解いていない状態だと思って、これから過去問スケジュールを組み立て直しましょう」とお話ししました。

塾には、お父様から「うちの子はまだ過去問を解ける状態じゃないので、塾のスケジュールではなく、我が家のやり方でやります」と強く言ってもらいました。
その後、K君はきちんと志望校対策をし、無事に第一志望に合格しました。

“仕上がり”が早すぎるのも困りもの

逆に、S君は、9月の時点で第一志望、第二志望共に余裕で8割以上取れていました。
この時期にこれだけ取れるというのも問題です。

なぜなら、S君もお母様も「もうこれ以上勉強しなくても大丈夫」とタカをくくり、勉強しなくなってしまったからです。周囲の受験生が目の色を変えて勉強している中、ディズニーランドに行ったり宿題をないがしろにしたりといった生活が続き、当然のごとく成績が急降下していきました。

何度も言いますが、大切なのは「本番にピークを持ってくる」ことであり、仕上がった状態は長続きしないので、早すぎる仕上がりもまた困りものなのです。

このような場合は、手をつけていない過去問を数年分残して一旦ストップ。塾の特訓授業や平常授業の宿題に専念し、入試の1~2ヵ月前に再開しましょう。

*本記事は、『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(安浪京子著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成したものです。