中国経済の減速で「理性的消費」に
コスパを吟味、価格に敏感に
他方、中国の大手企業がホンモノの日本料理に目を付け、作るようになっている。例えば、中国のEC最大手アリババ創業者のジャック・マーが肝いりで開業したスーパー、「フーマーフレッシュ(盒馬鮮生)」は、日本のコンビニやスーパーで売っているような、パックのそばやすし、サーモンの刺身などを売り出している。さらに、北京のほかのスーパーでも、中国企業が作ったどら焼きやカステラも見かける。
中国の大衆紙「新京報」は8月19日付の記事で、「中国市場での日本料理分野の競争が“ヒートアップ”したのは、日本ブランドのみが引き起こしたのではない。長い年月をかけて、『争鮮回転寿司』『村上一屋』など中国の日本料理店はますます強くなっている」と述べた。さらに、「中国人にとって日本料理は目新しいものでなくなっている。中国国内の日本料理店は、消費者のニーズをより的確に把握し、リーズナブルな価格で消費者に提供することで、日本料理分野での競争は激しくなるだろう」という見通しを示している。
数年前であれば、「良いものなら、高くてもいい」という消費者もいた。しかし、近年の中国人は経済の減速を受けて、「理性的消費」をするようになっている。すなわち、衝動的な買い物を避けてコスパを吟味し、なるべくリーズナブルに済ませようとする傾向にある。要するに、価格に敏感になっているのだ。
「大衆点評ネット」を見ると、前出の「村上一夜」は、1人当たり単価が80元(約1600円)である。対して、スシローは1人当たり170元(約3450円)となっている。
少し良いものは日本ブランドでホンモノを楽しむ、一般的なものは中国ブランドで済ますといった、棲み分けができつつあるだろう。
中国人にとって、かつて日本ブランドは「崇拝の対象」だった。それが今ではポピュラーになり、「選択肢の一つ」になった。ホンモノの日本ブランド・日本製品にかなり近づけた商品を出す中国企業も出てきている。中国でビジネスをする日本企業にとって、新たな競争の段階に入ったといえる。