「すぐにA子さんのアパートに行くのは止めるよう、Cさんに話してください。もし万が一のことがあった場合、Cさんだけではなく会社とD所長も責任を問われる恐れがあります。それと、これからの対処ですが、会社で個人情報に関する扱いを定めていると思います。過去に社員全員もしくは管理職者であるD所長に対して、会社が個人情報の扱いに関するマニュアルを配布したり、研修を行ったりしたかもしれません。とにかくすぐに会社の個人情報保護規程を確認し、従うようにしてください」

「分かりました。もう履歴書のコピー配布はやめます」

本社から人事部長がやってきた

 F社労士が帰った後、D所長はCとその他のメンバー達を集め「本人から『親の世話を受けており見舞いは不要』との申し出があったので、A子のアパートを訪問しないように」と指示を出した。

 しかし、事はそれだけでは済まなかった。16時頃に、E部長が、A子の訴えが事実か否かの調査をするために営業所に立ち入ったのだ。E部長は、D所長や営業所のメンバーたちと個々に面談を行い、A子の主張に間違いがないことを確認すると、D所長に対して

「君には毎年最低1回の研修と改定マニュアルを通じて個人情報保護に関する会社の方針を徹底していたのに、採用選考のために会社で渡していた履歴書のコピーをさらに複製して部下に配るとはけしからん。顧客情報だけではなく、社員情報も個人情報であることは分かっていたはず!」と強い口調で叱責した。