さて、野田氏の世襲批判に小泉氏はどう答えたか。

「15年前、世襲に対する強い批判に立ち向かった、そういう選挙でした。様々な攻撃批判を応援の声を力に変えて勝ちたい(一部略)」

 何の答えにもなっていません。世襲の弊害をもし知っているなら、「私が総理になったら世襲が減る改革をするつもりです」と言うか、世襲を肯定するならそのいい部分について反論するのが「政治家」です。元総理の息子でハンサム。厳しい声にさらされたことがないサラブレッドの「底」が見えた瞬間でした。

 と、ここまでは野田氏の言葉を借りて世襲批判をしてきました。実際、日本がここまで停滞し、閉塞感に包まれているのは、与党が小泉氏のように4代目、100年議員といった世襲議員だらけとなっていることと無縁ではありません。まるで江戸幕府の大名のようになっている現状を改革しない限り、つまりは政権交替しない限り、日本は下り坂を転げ落ちると思うからです。当初、危機感があったはずの自民党は、もはや「刷新」ではなく「刷新感」を出す総裁選にシフトして、メディアもお祭騒ぎをし、立憲民主党をはじめ野党は政権奪取の戦略も政策も国民にアピールできていません。

政権交代への道のりは険しいが
「もしかして」もあり得る理由

 確かに、数字的には政権交替の可能性は低いでしょう。21年、岸田総理の下で行われた衆議院選挙で自公は293議席を獲得。野党は全党合わせて162議席ですから、131議席の差があります。しかし、当時と比べて違うのは自民党の支持率が大変低くなっていることです。

 各党の支持率は、自民が29.9%、立憲民主が5.2%、日本維新の会が2.4%、公明が3.3%、共産が2.6%、国民民主が0.8%、れいわ新撰組が0.8%、そして「特に支持している政党はない」が45.7%でした(NHK8月調査)。対して菅義偉内閣崩壊の時期においては、自民の支持率は35.1%、立憲民主6.8%、公明3.0%、維新2.6 %、共産3.0 %、国民民主0.9%、れいわ0.4%、そして無党派層は42.3%でした(NHK2021年2月調査)。

 つまり、自民党の支持が約5%落ちて、無党派層が3%以上増えています。自民党支持をやめた人を取り込み、無党派層を掘り起こせば、厳しい状況とはいえ、勝機を見出す数字は見えてきます。朝日新聞の8月15日調査などによると、無党派層は59%に達しているのだから。つまり、野田氏が今回の党首選に勝利すれば、ゆくゆく総理に返り咲ける可能性も、状況次第ではなきにしもあらずと言えるのです。