「立憲=リベラル」というレッテルには「時代遅れ」という若者の先入観がつきまといます。野田氏のような選挙では、残念ながらSNSで若い無党派層を取り込めません。安野氏の「AIあんの」は1000人の人と同時に会話してそれぞれの質問に答えられるように作られた、一方通行ではないAIです。人々の意見を集約して公約や政策をアップデートしていく手法も、浮動票が多い若者を引きつけるでしょう。

 石丸伸二氏のように「論破するSNS」ではなく、話し合うSNS選挙こそ、今後に求められているもの。いち早く、それを採り入れるのです。ただし、彼もただ者ではありません。「都知事を目指すのであって、誰かの手伝いはしない」と公言してきました。だからこそ、技術者としてでなく政治家として育てるために、軍師として迎える礼を尽くしてほしいのです。

「注目選挙区」をつくって徹底抗戦
「野田どじょう」は浮上できるか

 さらに、注目選挙区を作ります。たとえば麻生太郎氏。彼は83歳ですが、比例復活の定年は73歳なので、小選挙区で勝たないと落選です。過去2回の選挙を見ると、同じ選挙区で立憲は立候補せず不戦敗。それでも麻生氏の得票は前回より3万減りました。2位・3位連合ならあと3万票の差だったので、攻撃力なら強力な蓮舫氏を野党連合候補として麻生氏にぶつけ、「老害批判」「世襲批判」を繰り広げたらどうでしょう。

 安倍派裏金候補の中では、浮動票が多い東京板橋区の下村博文氏を相手に、初当選時僅差で破れた有田芳生氏か、参院から鞍替えした辻元清美氏に徹底的に「裏金攻撃」をさせます。板橋なら辻元氏の大阪弁もウケる可能性はあります。また、安倍側近・萩生田光一氏に対しては、統一協会研究のプロ・有田芳生氏かジャーナリスト・鈴木エイト氏に出馬をお願いしましょう。萩生田氏は公明党の東京進出を妨害したことで、公明票も厳しいだけに落選もありえます。

 そして立憲・維新の共同戦線の象徴として、吉村洋文大阪府知事にも鞍替えしてもらい、二世候補・河野太郎氏か若手の人気者・小林鷹之氏と対決してもらいたいものです。吉村氏も知事で共同代表である限りは日本維新の会は発展しません。兵庫県知事の内部通報問題を抱えて、維新の方向性にも疑問が持たれている時期だけに、ここが政治家としての勝負どころでしょう。

 このように、争点別に注目区をつくり、メディアが騒げば、自民党の政策の悪い点は隠し切れなくなり、「刷新感」だけの総裁では対抗し切れない状況に追い込めます。

 最後に残ったのが共産党との協力問題です。前回は共産党との共闘が労働組合・連合に見放されて敗戦の原因になったとされていますが、安倍派裏金問題、統一協会問題などは共産党の調査力あっての成果です。彼らにはその調査力を期待して、閣外に野党共闘自民党調査会をつくり、共産党主導で徹底的に政治的不正を調査する組織をつくるという案はどうでしょうか。

 以上、野党各党の思惑を政権交代だけに集中させる私案を考えてみました。果たして「野田どじょう」は今回の代表選で浮上し、政権交代に向かっていけるのか。まさに日本の正念場です。

(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛)