「非自発的失業者」が利用できる
健康保険料の軽減措置とは?

 民間企業や団体などに雇用され、賃金や労働時間などの一定要件を満たしている人は、正社員、契約社員、派遣社員などの雇用形態に関係なく、労働者のための健康保険(被用者保険)に加入することになっている。

 だが、退職すると同時に健康保険の資格も喪失してしまう。退職日の翌日から、それまでの健康保険は使えなくなってしまうので、その他の公的な医療保険への加入手続きをしなければならない。

 退職後の加入先は、(1)被扶養者、(2)任意継続被保険者、(3)国民健康保険という3つの選択肢があり、支払う保険料や受けられる給付にも違いがある。

 この3つの選択肢のなかで、いちばん保険料が有利なのは(1)の被扶養者になることだ。家族の中に会社員や公務員の人がいれば、その扶養家族になることで、保険料の負担なしで健康保険に加入できる可能性がある。

 ただし、健康保険の被扶養者になれるのは、生計維持関係にある三親等以内の親族で、年収130万円未満などの要件を満たしている必要がある。同居していなくても生計維持関係にあれば被扶養者になれる可能性はある。だが、退職後に働いていなくても、冒頭のA子さんのように雇用保険の失業給付などが一定額を超えているような場合は被扶養者になれない。

 こうしたケースでは、(2)の任意継続被保険者か、(3)の国民健康保険のいずれかから、保険料の負担が低いほうを選ぶというのが一般的な流れだ。

 任意継続被保険者は、退職した会社の健康保険に引き続き加入する制度で、原則的に傷病手当金と出産手当金を除いて、退職前と同じ給付が受けられる。
  
 問題は保険料だ。在職中の保険料は労使折半で、原則的に勤務先が保険料の半分を負担してくれる。だが、退職後は事業主負担がなくなり、保険料の全額が本人負担となるため、負担感は大きくなる。

 さらに、これまで任意継続被保険者の保険料は、「退職時の本人の標準報酬月額」と、「加入者全体の標準報酬月額の平均」のどちらか低いほうをもとに計算することになっていた。

 だが、2022年に法改正されて、現在はそれぞれの健保組合の判断で、「退職時の標準報酬月額未満の範囲内の金額」まで保険料を引き上げられることになっている。そのため、健保組合によっては、任意継続被保険者の保険料がかなり高くなるケースも出ているのだ。

 一方の国民健康保険は、前年(1月1日~12月31日まで)の所得によって保険料を決めている。たとえ無職だったとしても、退職前の年収をもとに保険料が計算されるため、退職直後は実際の支払い能力以上の高い保険料になってしまうことが多いのだ。

 ただし、A子さんのように契約期間満了や、会社の倒産・解雇などで退職した「非自発的失業者」には、国民健康保険料の軽減措置が設けられている。