前年の所得の何%で
保険料の計算をしてくれるのか

 非自発的失業者の国民健康保険料の軽減措置は、民主党政権時代の2010年にスタートした制度だ。

 当時は、08年に起きたリーマンショックの影響で大量に派遣切りが行われ、非正規雇用の不合理な待遇が社会問題になり始めていた時期だ。仕事や住む場所を失った非正規雇用の労働者を支援するために、08年の年末から09年の年始にかけて東京千代田区の日比谷公園につくられた「年越し派遣村」は、社会に大きな衝撃を与えた。

 こうした状況を受けて、倒産や解雇、派遣切りなどで仕事を失った人が、医療にかかれる機会を失わないようにするために、国民健康保険料を軽減する制度が創設されたのだ。

 この制度の対象になるのは、勤務先の倒産や解雇、雇い止め、リストラなどにあった人のほか、病気やケガなど正当な理由のある自己都合退職者で、「非自発的失業者」と呼ばれる人たちだ。雇用保険の基本手当(失業給付)を受けており、退職日に65歳未満であることも条件だ。

 離職票の離職理由コードの欄に、「特定受給資格者(11、12、21、22、31、32)」「特定理由離職者(23、33、34)」と記載されていれば、国民健康保険料の軽減措置の対象になるので確認してみよう。

 前述のように、国民健康保険料は前年の所得をもとに計算される。だが、非自発的失業者に対する保険料軽減措置は、この保険料計算のもととなる給与所得を100分に30として算出することで、保険料を軽減することになっている。

 国民健康保険料は、加入者の収入に応じて決まる「所得割」のほか、土地や山林など保有資産にかける「資産割」、家族の人数に応じた「均等割」、世帯ごとにかかる「平等割」などの要素の組み合わせによって決まってくる(組み合わせ方法は、各市区町村によって異なる)。

 この制度で軽減措置の対象になるのは「所得割」の部分だけだが、非自発的失業者に限らず、所得が一定額以下の人には「均等割」「平均割」が割り引かれる制度も別途設けられている。

 非自発的失業者は、「均等割」「平均割」も前年の給与所得を100分の30にして計算してもらえるので、自己都合退職の人に比べると保険料は大幅に安くなるのだ。また、医療費が高額になった場合の自己負担限度額を決める高額療養費の所得区分も、引き下げられる可能性が高い。軽減措置の対象になる人は、ぜひとも申請したい。

 軽減期間は、退職日の翌日が属する月から翌年度末までだ。たとえば、退職日が24年6月30日だった場合は、24年7月から26年3月までの保険料が軽減される。