軽減措置を受けるために
必要な証書とは?

 手続きは、自分の住所地のある市区町村の担当窓口(国民健康保険課など)で行うが、この時に気をつけたいのが提出する書類だ。

 非自発的失業者の保険料軽減は、ハローワークで雇用保険の手続きを行った求職中の人を対象とした制度だ。保険料軽減の申請をするためには、休職中であることを証明するための「雇用保険受給資格者証(または雇用保険受給資格通知)」が必要になる。

 単に「退職した」ということだけでは利用できないので、退職した会社からもらった離職票を提示するだけでは、手続きは終わらないのだ。
 
 A子さんが最初に国民健康保険の加入手続きをした時は、雇用保険受給資格者証が発行されていなかった。そのため、この時点では、通常通りに保険料が算定され、月額2万4300円という請求が行われたのだ。

 その後、ハローワークで発行された雇用保険受給資格者証を持って、再び市役所で手続きをしたところ、非自発的失業者の保険料軽減が認められ、A子さんの月額保険料は約6700円まで軽減された。

 こうした制度があることを知らなければ、A子さんは毎月1万7600円も多く保険料を支払わなければいけなくなるところだった。年間では約21万円も差額がでる。退職して、次の仕事も定まらない時には大きな負担だ。場合によっては負担が大きくて保険料を滞納し、国民健康保険の資格を喪失することにもなりかねない。

「私は、社会保険に詳しい友人が相談にの乗ってくれたので、再び手続きに行って、軽減措置を受けられました。でも、市役所の職員の人は、非自発的失業者に必要な手続きについて何も教えてくれませんでした。その時に、『雇用保険受給資格者証が発行されたら、もう一度窓口に来て手続きしてください』と教えてくれたら、こんなに不安になることはなかったと思います」

 A子さんを担当した市役所の職員が気の利いた人なら、必要な手続きについえ教えてくれたかもしれない。だが、原則的に行政サービスは申請主義で、本人や家族などの当事者が自ら手続きを行わなければ利用することができない。

 公的な医療保険をはじめとする社会保障、税金、福祉などには、困っている人を助けてくれる制度がたくさんある。だが、その存在を知らなければ、利用することはできない。なんとか改善できないものかと思うが、現状はなかなか厳しいようだ。

 非自発的失業者の国民健康保険料の軽減措置は、会社の倒産・解雇、雇い止め、リストラのほか、契約社員の期間満了でも利用できる。また、病気やケガによる退職など正当な理由があれば、自己都合退職も対象になることがある。

 申請が認められれば、安定した収入がなくなる退職後の出費を抑えられるので、対象となっている人はぜひとも利用してほしい。