演説で、集まった聴衆に「明るい未来」を想像させるストーリーテリング(データよりも、体験談やエピソードを交え、物語として伝える話法)の名手と言えば、アメリカのバラク・オバマ元大統領が代表格だ。
小泉氏は、あの出馬会見で、働く人たち、なかでも子育てと家事に追われる世代に、「これからはきっと良くなる」というイメージをストーリーテリングで語る「和製オバマ」になったと実感した。
小泉氏が試される
「首相としての器」
もちろん、小泉氏の会見内容には、評価できる点もあれば、「?」をつけたくなる部分も多々ある。
まず、評価できる点は、小泉氏が総裁選挙で勝利し首相になれば、早期に衆議院の解散・総選挙に踏み切り、政治改革と規制改革、そして、働き方など人生の選択肢を拡げる「3つの改革」を1年以内に実施すると訴えた点だ。
この部分は、在任期間わずか384日の間に、携帯電話料金値下げ、デジタル庁の創設、不妊治療への保険適用などを実現させた菅氏の功績とかぶる。
また、政党が所属議員に支出する「政策活動費」の廃止に言及し、「聖域なき規制改革」として、個人が自家用車で乗客を運ぶ「ライドシェア」の全面解禁や選択的夫婦別姓を認める法案を国会に提出すると約束した点も評価していいだろう。
これは、「自民党をぶっ壊す」や「聖域なき構造改革」を政策の中心に据えた父親の小泉純一郎元首相を彷彿とさせるものだ。
その小泉氏は、9月7日、東京・銀座で遊説をスタートさせた。銀座での第一声は、来たる解散・総選挙を視野に入れたものだろう。
小泉氏の頭の中には、「総裁選勝利→首相就任→解散・総選挙」の流れが浮かんでいるのかもしれないが、小泉氏が唱える政策には懸念すべき点も多い。