「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンだ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? 同書の著者に秘訣を教えてもらった。(構成/ダイヤモンド社・佐藤 里咲)

【口はうまいけど…】相手が「本当にできる人」かを一瞬で見抜けるすごい質問Photo: Adobe Stock

Q.自分に合った仕事を探すには?

──周囲の友だちで、新卒で就いた仕事が思い通りのものでなく、退職を決めた人が何人かいます。このようなかたちで転職を考える際、自分のやりたいことを探すうえで気をつけるべきことはありますか?

ネットでもかなりのことが調べられる

ジル・チャン氏(以下、チャン氏) 新しい仕事を探すとき大切なのは、まずは情報収集と、自分でいろいろなことを体験してみることですね。

 私自身が就職活動をしていたときは、いまほどインターネットの情報もなかったので、実際にその仕事に就いてみてやっとわかるというような状況でした。

 けれどいまであれば、インターネット上でさまざまな情報を探すことができると思います。オンラインイベントを見ることもできますよね。

 人づてでも知り合いがいれば、実際にその仕事に就いている人の話を聞くこともできます。またはインターンシップなどがあれば、実際に近いかたちで働くこともできますよね。

 このように、こういう仕事なんだろうと頭の中で想像するだけではなくて、自分でアクションを起こして情報を集めたり、実際に体験したりすることがその仕事をよりよく理解することにつながると思います。

「具体的な情報や体験」について質問する

チャン氏 最近、ある若者が私に仕事の相談をしに来て、このようなことを言っていました。

「いまの仕事はやりがいがありません。もっと意味のある仕事がしたくて、NPOで働きたいと思っているんです」

 いま私はNPOで働いていて、この手のキャリア相談をよく受けることがあります。就職の面接などでも、このような言葉を聞くことがあります。理路整然としていて、一見、信頼できそうに見えることもあります。

 ただ私はこのように言われたとき、必ずこう聞くようにしています。

「いままでにNPOでボランティアの活動をしたことはありますか? NPOに関わる人たちときちんと話をしたことはありますか?」

 イメージではなく、どこまで具体的に知って話しているのかを確認するんです。

 本気でNPOで働きたいと思っているのであれば、NPOに自分で関わろうとする機会を得ようとしていると思います。また、こうした大きな決断をする際に、どこまで慎重に材料を集めて検討できるかということもわかります。

自分自身で責任を持つことが重要

チャン氏 また、仕事を決めるときは、思い描いていなかった結果になったとしても、自分自身で責任を持つことが重要です。

 私自身の経験を紹介すると、あるとき、とある国際的な銀行から上級職での仕事のオファーをもらったんです。現職の給料も悪くないのですが、いまの2倍以上の給料でオファーされました

 そこで私は、オファーを受けるべきかとても悩みました。友人に相談すると、ステップアップになるし、履歴書でもとても目を惹くキャリアになるから受けたほうがいいと勧めてくれました。

 私はその後2週間考え抜き、そのオファーを受けないことに決めました。いちばんの理由は、労働時間がとても長くなってしまい、家族との時間がとれなくなってしまうためです。

リスクの小さいうちにいろいろと試す

チャン氏 断っても後悔することはないと自分で納得して決めました。この決断に対して、周囲の人全員が共感してくれたわけではありません。ただ、自分がこの判断がいちばんいいと思い、自分の責任で決めました

 この話を紹介したのは、若いときに自分に適した職業を探すことはもちろん大切ですが、年を重ねていく中でもさまざまなチャンスやチャレンジをどう生かすか決める機会はあることを知ってもらいたかったからです。

 ただ年をとってから迫られる決断のリスクやコストは若いときよりも大きいです。それもあって、若い人は、いまのうちにたくさんのことを試してみることが大切だと思っています。

 いろいろなことを体験するうちに、自分の中で燃える火のような「本当にやりたいこと」が見つかると思いますよ。

※本記事は、『「静かな人」の戦略書』の著者に話をうかがったものです。