最後に、これらのことを前提として、自治会・町内会を含めた日本の地域社会の将来について、展望してみたいと思う。

 自治会・町内会は今後も確実に衰退していくことが避けられない。高齢化と担い手不足である。

 どうあがいたところで、かつてほどの活動力がなくなっていくことは否めない。そもそも全戸加入原則の下に共同防衛という公的な活動を自らに課しているかぎり、フリーライダー問題がついてまわる。担い手不足は構造的なのである。

 自治会・町内会にこれまで通りの末端行政の下請け仕事を任せることは徐々にできなくなっていく。なによりも行政が、このことを認めて受け入れるべきである。自治会・町内会の側でも、地域での具体的な活動を自分たちだけで維持していくことは、もはや困難になっていくだろう。

町内会の担い手は
政治にも影響を及ぼす

 町内会の本質は、全戸加入原則にある。その長所も短所も、すべてここに由来する。一般的な市民活動団体とは異なり、全戸加入原則を掲げることで、町内会は地域住民を代表して行政と折衝できる特権的な地位を確保することができた。

 しかし、実際に町内会を支えてきたのは、ごく少数の人々である。この少数の人々が行政の下請け仕事を積極的に引き受けることで、その特権的な地位を維持してきたのである。そのような下請け仕事は誰もがやりたがるわけではないので、どうしても限られた人が引き受けることになる。それゆえ、そのような特権を活用できるのも、限られた人だけになってしまう。

 町内会が切り拓いたのは、この行政との特権的な関係であった。さらに一部の町内会の担い手層は、議員を介して政治的な意思決定にもある程度の影響力を行使するまでになった。しかし、それは全戸加入原則によって地域住民を代表しているという建前があるにもかかわらず、実際には少数の人々の特権として機能し、きわめて不透明なものになってしまっている。