しかし、自治体の行政や議員がその声を聴かざるをえない特権的な場を、町内会が確保してきたというこの成果は、住民自治にとってはかけがえのない財産なのである。このことは継承するに値する、捨ててしまうには惜しい成果なのである。

 そうすると問題は、この特権的な場をどのように開放し、いかにして文字通りの全戸加入原則を実現するかということである。

若い担い手がいない
町内会はどうすべきか

 そこで町内会を、住民が誰でも参加して、行政とともに協議し、決定し、場合によっては議会に要求を突きつける、そんな開かれた協議の場にするというのはどうだろうか。これまで町内会は、行政への協力などの具体的な活動を行う団体と考えられてきた。具体的な活動を行うためには、活動力のある若い担い手を確保する必要があった。そのことがしんどくなってきたのだから、やめてしまおうということである。

 そこは捨てて、行政や議会への窓口機能だけを残すのである。住民の声が町内会という場に集約されることは、行政にとってもありがたいことである。しかもそこがこれまでのような一部の人々ではなく、すべての住民に開かれているならば、あちこちに配慮して民意を集約する手間を省くことができる。行政はその時々の行政課題をそこに持ち込むことで、住民と協議したうえで、住民に協力してもらう事柄を調整することもできるだろう。行政にとっても、そのような場が一元化されることには、メリットが多い。

 事実、自治基本条例などにもとづく都市内分権制度は、実はそのようなことを意図していると見ることもできる。町内会そのものではないが、条例によって公的な組織として認められた住民協議会が、そのような場になることが期待されているのである。

 しかし、町内会が単なる協議の場になって、具体的な活動がなくなることは、行政にとっては、これまでやってもらっていた諸々の下請業務が動かなくなるので、大変な損失である。これについてはどうすればよいのか。そこで、ここに市民活動団体を位置づけるのである。これまで町内会がやってきた活動のひとつひとつを、それに興味をもって活動している市民活動団体に任せるのである。