一方で、メッセージの自動応答機能がスマホに搭載されるまでには、かなりの年月(と少なくとも1件の訴訟)が必要だった。それ自体、特に革新的な技術だというわけではない。Eメールでは休暇中だと知らせるのに長年使ってきた機能だ。これがあればスマホから距離を置きやすくなるだけでなく、人の命を救うことにもなるだろう。多くの人が運転中にメッセージを返す、たったひとつの理由――やりとりの途中で相手を待たせたくない、という状況をなくせるのだから。

酒やドラッグにハマる若者が
減ったのはスマホのおかげ

 これまでに見てきたように、“いい気分でいたい”の裏返しは“嫌な気分になりたくない”だ――それも、できるだけ手間をかけずに。だからこそ、人はネガティブな気持ちの根本原因に取り組むよりも、アルコールやドラッグ……そしてスマホに頼る。

 2017年、ニューヨーク・タイムズ紙の記者マット・リヒテルは、アメリカのティーンエイジャーのアルコールとドラッグの摂取率が、この10年下降傾向にあると報じた。いいニュースだ――依存対象が別のものにすり替わっただけ、というのでなければ。「若者にとってスマホはドラッグの代替品?」という記事の見出しに対して、記事に登場した専門家の大半が、答えはイエスだろうと答えた。