「就活を成功させたいなら、採用する企業側の論理を知るべき」――そう語るのは、ワンキャリア取締役の北野唯我さん。「常に人手不足」「認知度が低い」「内定を辞退されてしまう」「外資系との給与差が開いている」といった多くの採用担当者、経営者の悩みを解決するため、北野さんが執筆したのが、著書『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』です。これまで属人的で全体像が見えなかった採用活動を構造化し、3000社以上の企業の採用支援実績、180万人の求職者のデータに基づいた「新しい採用手法」を紹介した一冊です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して紹介します。

マーケティングの考え方を採用に応用する

 マーケティングの世界では、CEP(Category Entry Point)という言葉がある。CEPとは、商品と顧客との接点のこと。商品やサービスを購入しようと思ったときにブランドを想起するきっかけとなる。採用の場合も、「あの会社、こんなことがあったな」と求職者に思い出してもらうポイントをつくるのだ。
 たとえば、炭酸飲料のカテゴリーでは、「夏の暑い日の午後」「風呂上がり」「リフレッシュしたいとき」などがCEPとして考えられている。

 CEPは、商品のブランディングの方向性を検討する上で非常に重要な概念だ。なぜなら、購入に結びつく入口の役割を果たし、多くのCEPを持つことができるブランドは、必然的に売上と市場シェアを拡大できることがわかっているからである。

 この考え方を、採用に応用すると、どうなるだろうか。
 採用活動におけるCEPとは、中途採用なら「転職したいと思ったタイミング」や「すぐに転職には紐づかなくても、自分の市場価値を調べてみたいと思ったタイミング」などだ。新卒なら「就職セミナーに参加したタイミング」や「就活サイトの登録前後」といった直接的なものもあれば、「学校のキャンパスに通う途中の駅広告」や「学校の先輩との何げない雑談」などがある。

 この概念をおさえておくと採用活動全体の効率を格段に上げることができる。求職者の入口(=CEP)をおさえておくかどうかで、単年ベースの採用活動の効率は桁違いに変わる。

・目立つ
・オンタイムである

 この2つの戦略を実行する上で、CEPの考え方は最強の武器となる。

経営者と同じ出身地や出身大学の学生を狙え

「理屈はわかったが、自社のリソースでは絵に描いた餅になる。そこまで予算も人も確保できない」
 こういう声が聞こえてきそうだが、そこは安心してほしい。結論からいうと、ターゲットとの接点、CEPさえおさえていれば、少ないリソースでも戦うことは十分可能だ。
 CEPを考えるときは、メインターゲットをできるだけ絞ることが重要になる。採用活動においても、同様だ。採用ターゲットの年間の動きを把握し、採用予算や工数が少ない場合にはターゲットを絞り込むべきである。

 具体的には、新卒採用であればターゲットは関東の学生か関西の学生か、どの学校のどの学部を対象とするのか、大学の偏差値や学部の偏り、所属する部活動やサークル、理系か文系かなどの要素を絞り込むことで、狙うべき接点が明確になる。
 中途採用でも、「エリア」「年齢の幅」「年収」「経験職種」「業界」などを絞ることで、CEPが明確になる。

 年間に数百名単位で採用する場合には、全国や海外まで含めたCEPを意識する必要があるが、年間で数名から数十名単位の採用の場合にはエリアを絞り、諸条件を絞って考えるだけで効率は格段に上がる。
 さらに言うならば、中小・中堅企業の場合、年間採用人数が1名ということもあるだろう。この場合、ターゲットを究極まで絞ることが重要である。具体的には、「先輩や後輩」を軸にするといい。経営者や人事担当者の出身地や出身大学の学生、出身企業の社会人をターゲットにすると効率がいい。同じ属性のターゲットを設定することで、土地勘や価値観の理解がしやすく、年間の動きも想像しやすい。年間の動きが想像できれば、CEPを設定しやすくなるからだ。