2012年、33歳のときに、僕はTBSからプルデンシャル生命保険に転職。テレビ局の“看板”のおかげでチヤホヤされて“いい気”なっている自分がカッコわるく思えたので、日本一の営業会社であるプルデンシャルで、「自分の実力」を実証してみせようと心に決めたのです。

 だけど、現実は厳しかった。保険営業は、親類や知人にアプローチすることから始めるのが通例で、僕もそこからスタートしたのですが、“義理”で保険に入ってくださる人がいる一方で、「保険に入るべきだ」などと説き伏せようとする僕に反発する人も多く、知人との人間関係が深く傷つくようなケースが増えていったのです。

 しかも、知人のよしみで保険に入ってくれた人も、僕にその方の知人を紹介してくれる人はあまりいませんでした。強引な営業をする僕を紹介したら、知人に迷惑をかけるのではないかと危惧(きぐ)したのだと思います。その結果、営業マンになって半年が過ぎた頃には、新規営業をするために連絡をする相手が尽きてきたのです。

 これには震え上がりました。

 フルコミッションですから、契約をお預かりできなければ報酬はゼロ。「このままいったら、人生終わる……」。普段は努めて平静を装っていましたが、妻や幼い子どもたちを路頭に迷わせるという最悪の状況を思い描いては、吐き気を催すほどの危機感に苛(さいな)まれる毎日でした。

 あの頃は、本当に苦しかった。だけど、八方塞がりの状況のなかで、なんとか活路を見出そうともがくなかで、僕は、徐々に「影響力」というものの重要性に気づくようになりました。

 そして、試行錯誤を重ねながら、「影響力」を正しく扱う方法を磨き続けることで、次第に状況が変わり始めました。お目にかかるお客様から好意的な反応を返していただけるケースが増加。かつて人間関係を傷つけていた頃とはまったく違って、自然な会話の流れのなかで、「わかった。君のすすめる保険に入るよ」「あなたに紹介したい人がいる」といった言葉をかけてもらえるようになったのです。

 気がつけば、あれだけ苦しんだのが嘘のように、なんと初年度で個人保険部門において全国の営業社員約3200人中の第1位を獲得。「影響力」という武器を身につけることで、状況を一変させることができたのです。