お作法文化を小さく変えるための行動と、お作法文化と付き合いつつ効率よく仕事を進めるための行動を4つ提言しよう。

身内ではカジュアルに振る舞う

 まず、お作法文化を小さく変える方法を2つ。第一に、身内から、少しずつお作法を無視してみる。

「このチームでは、お作法無視でいきましょう!」

「チャットではカジュアルにいきましょう!」

 このように身内、たとえば部内やチーム内の小単位ではお作法にこだわらずにコミュニケーションする提案をして実践してみよう。やがて他の部署、他のチームなどご近所さんが、柔らかなコミュニケーションに心地よさと共感を示し、真似する人たちが出てくるかもしれない。

越境体験を増やす

 しかしながら、日頃外の人たちと接する機会がない人たちほど、そもそも何が自分たちのお作法およびローカルルールなのかわからず、無自覚に振る舞っている可能性も高い。
 
実際に筆者が過去に勤めた企業で、その企業グループ特有の用語や言い回しを指摘したところ、部課長から「え、これって世間一般では使わない表現なの!?」と驚かれたことがある。

 ここは一つ、仲間と一緒に外に出てみよう。
 
他社の人たちと組んで一緒に仕事をする体験を増やす。社外の人たちとの越境学習プログラムに参加してみる。発注者と受注者の関係ではなく、フラットな関係で協業や共創してみる。そのような体験を通じ、お互いのお作法やクセに気づくことができる。チームに提案してみよう。

ルールを明文化し、共有する

 お作法文化をなくすハードルは高いにしても、うまく向き合いつつ効率化していくための方法はある。

 一つは、相手に守ってほしいお作法をせめて明文化(文章化)することだ。文章で明確に示すことで、相手に説明しやすく伝わりやすく、相手も無駄な「地雷」を踏むことがなくなる。差し戻しや手戻りも減り、相手の尊厳を無駄に傷つけることもなくなりお互いハッピーである。

 ちなみに筆者も、自分なりに作家としてのトーン&マナー(自身または自社のイメージの一貫性や統一感を保つための表現方法やルール)をまとめ、明文化している。メディアの取材を受けるときなど、あらかじめ編集者やライターにお見せすることもある。後出しのお作法は煩わしく感じられるが、先にルールやガイドラインを提供すると案外喜ばれたりもする。

AIに代筆させる

 お作法とうまく付き合うために、生成系AIを活用するのもアリだ。ChatGPTなどにお作法を学習させ、お作法・ルールに沿った文章を代筆してもらう。

 お作法とは要するに「誰もが同じアウトプットを出すためのルール」だ。それなら、もはや書き手は人間である必要はないのだ。テクノロジーを使って、既存の文化をリスペクトしつつ正しくラクをしよう。

 とはいえ、ChatGPTなどの生成系AIツールにお作法を教えやすくするためにも、ルールは明文化しておいた方がよい。たとえAIを活用していても、基準やルールが曖昧で出力文に対していちいち修正指示を出していては、それはもはや機械に使われている人間である。

一歩踏みだす!

 ・身内ではカジュアルに振る舞ってみる
 ・仲間と一緒に越境する体験を増やす
 ・ローカルルールは明文化して共有する

(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)

沢渡あまね(さわたり・あまね)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。