「あなたの会社の人たちは、SNSで自社の人たちだけに反応していませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「SNSで身内とだけからむ」ことの問題点について指摘します。

内輪のノリが強い組織の社員が「SNSでやっていること」・ワースト1自社の人たちばかりで「いいね」し合っていないか?(イラスト:ナカオテッペイ)

SNSは、社会に目を向けるよいツール

 外部の人の意見に耳を傾けようとしない、社外の人の発信にまるで関心を示さず反応しない人たちがいる。
 この傾向はJTC(Japanese Traditional Companies)と呼ばれるような日系大企業に限らず、インターネットでの発信や露出に意欲的なスタートアップ企業など、比較的若い企業でも見られる。

 社内の意識を外に向けるために使えるものの一つがSNSだ。あらゆる組織に属するあらゆる人たちの、あらゆる価値観がそこには渦巻いている。
 発信には消極的な組織であっても、SNSを利用して社会を眺めることは「ムラ社会的な体質」に大きな風穴を開けるきっかけになる。あなたはもちろん、社内の人に推奨してみてもよい(ただし強要はNG。職種や業種および上場前などセンシティブな状況下で、不特定多数の人がいる場での情報発信が不適切とされる場合もある。人付き合いを煩わしく思う人、個人を特定され得る情報をインターネット上で発信したくない人もいる)。

社員の投稿にだけ「いいね」やコメントをする組織

 とはいえSNSも、振る舞い次第では内向きの体質を強化し、その体質を広く社会にお披露目することになってしまう。

 自社の社員の投稿には社員同士でせっせと「いいね」をつけたりコメントをするが、社外の人の投稿には無反応。そんな企業を筆者はいくつも観測してきた。

「この会社は自分たちにしか興味がない社風なのかも」「内輪なノリが強いのかな」「忖度(そんたく)させられて自社の人の投稿にだけ反応しているのかな」

 など、どことなく内向き文化の匂いを感じてしまう。

 実際そのような企業の人たちと行動してみると、外と内との線を引きたがる傾向が強かったり、社外の人の意見や提案を聞こうとしなかったり、内弁慶(うちべんけい)な姿勢を感じることは多い。

 SNSを駆使して外の風に触れる取り組み自体は素晴らしい。だからこそ「内輪なノリの人たち」と思われてしまうのはもったいない。SNSを利用するなら、積極的に自社に関わろうとしている人や仕事の関係がある人には、たまにであっても反応する方が良い人間関係も維持できるだろう。

社外の人にも「いいね」やコメントしてみる

 社外の人のコメントに逐一反応しろなどと言うつもりはない。日々の業務に支障をきたすし、なによりSNSとの付き合い方は人それぞれである。
 社外の人の投稿も眺め、良いと思ったものにはコメントするなどの反応を示す意識を持つだけでいい。

 そして社外の人から聞いた話、得られた気づきや意見などを社内の人たちに共有しよう。
 
できればその情報やヒントをもとに何か課題を解決し、社外の人の発信のおかげで解決できたと説明(種明かし)しよう。「社外の人の話を聞くのもまんざらではない」「積極的に交流したほうがいいのかも」と効力感を組織に生み、内に向いた目線を緩やかに外に移していける。 

一歩踏みだす!

 ・「見るだけ」でもいいから、SNS利用を勧めてみる
 ・思い切って社外の人の投稿に反応する意識を持つ
 ・社外から得た情報やヒントをもとに、社内課題を解決する

(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)

沢渡あまね(さわたり・あまね)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。