「読者が自分事に思えるように」「それだと自分事にならないだろう」「もっと自分事として考えなさい」……みたいな言い方をよく聞きますよね。新刊『落とされない小論文 増補改訂版』の著者、「ウェブ小論文塾」代表で元NHKアナウンサーの今道琢也氏が、小論文試験や正式な文書において「自分事」を用いてよいのかどうかを語ります。(構成・画像/ダイヤモンド社 今野良介)
よく聞くが、どうなのか?
最近よく見かける言葉で、ちょっと気になるのが「自分事(じぶんごと)」という言葉です。小論文の答案でも使われているのを見かけます。
この言葉は、「人事・他人事(ひとごと)」の対になる言葉として出てきたようで、文字通り「ほかでもない自分のことである」という意味で使われています。
新聞や雑誌などの活字メディアでも「自分事」という表現を見かけるようになり、かなり一般化してきています。
一方で、この言葉には違和感を覚える人も多いのではないでしょうか。
四種類の国語辞典で調べたところ、いずれも、「ひとごと」については掲載されていましたが、「自分事」を載せているものはありませんでした。やはり、「自分事」を正式な日本語として認めるのはまだ少し早いようです。
したがって、小論文試験や志望理由書などの正式な文章で「自分事」という表現を用いるのは避けたほうがいいでしょう。
採点者の考えにもよりますが、減点される可能性があります。
我が事や自分の事などと書き換えるか、どうしても使いたい場合は「自分事」とカギ括弧でくくったほうが良いでしょう。
以下に、小論文の答案でよく見かける誤用表現を掲載します。文章を書くときの参考にしてください。
× 自分事として
○自分の事として
*「自分事」は、正式な日本語ではない。
× 的を得た表現
○的を射た表現
×その日は本を読んだりして過ごした
○その日は本を読んだり、テレビを見たりして過ごした
*「~たり、~たり」というように、重ねて使うのが原則。
×きめ細やかな
○きめ細かい、きめの細かい
『落とされない小論文 増補改訂版』では、このような「誤字・誤用表現」などのミスを回避する方法のほか、試験直前期でも即効性のあるスキルと知識を網羅的に掲載しています。