よかれと思って部下にアドバイスしたら、次の日から「うるさいヤツ」扱いされて他の部下も指示に従わなくなった。そんな部下からの上司や先輩に対する不当な攻撃を、弁護士の國安耕太氏は「上司いじめ」と表現する。上司に牙を向くような部下の言動もパワハラの一種となるのだ。良好な職場関係を築くために知っておきたいパワハラの定義とパワハラと受け取られかねないNGワードを筆者が解説する。※本稿は、國安耕太氏『上司いじめ――企業法務弁護士が教える上司のためのハラスメント対応法』(あさ出版)の一部を抜粋・編集したものです。
パワハラの定義の構成要素(1)
パワハラは優越的な関係を前提とする
それではまず、厚生労働省の資料における「パワハラ」の定義について見ていきましょう。
「雇用対策法」を改正し、労働者が生きがいをもって働ける社会の実現を目的として成立した、改正労働施策総合推進法(以下/パワハラ防止法)のなかで示されている「パワハラ」の定義は、【図1-1】とされています。
これがパワハラを理解する上での基本(定義)となり、個別具体的な行為につきパワハラか否かを判断していくことになります。
では、パワハラの定義を構成する要素を1つずつ説明していきましょう。
パワハラの要素(1)にある「優越的な関係を背景とした」という言葉から、パワハラは立場の強い上司から弱い部下に行うことのように、思われがちですが、
●「部下から上司」
●「後輩から先輩」
●「非正規社員から正社員」
●「同僚間」
であっても、以下の【図1-2】の型例に当てはまればパワハラ認定となり得ます。
「業務上必要な知識や豊富な経験があり、その人の協力がなければ業務の円滑な遂行が困難となる」というのは、たとえば、介護ホームの現場などで、管理者よりも現場でケアを担う職員のほうが実践的な知識やスキルが高く、その職員の協力がなければ入所者のケアに支障を来す、というような関係性を指します。