IT企業の技術者が、上司に当たる営業職の指示に従わず、大事な商談をすっぽかしたので案件の受注ができなかった、というようなこともこのケースに当てはまるでしょう。

 また、「同僚または部下からの集団による言動」とあるとおり、人数の多寡も立場に影響を与えます。1人のリーダーに対して部下が集団で嫌がらせとは、たとえばわざと情報を共有せず仲間外しをすることなどです。

 このように「職権」だけでなく、仕事の経験や知識、人数などの立場の優位性も勘案されるのが優越性の要件です。

パワハラの定義の構成要素(2)
業務上明らかに不必要・不適切・異常な言動

 パワハラの要素(2)「業務上必要かつ相当な範囲を超えて」というのは、社会通念に照らしてその言動に、以下のような要素を含んでいる場合を指します。

●明らかに業務上必要がない

●業務の目的を大きく逸脱している

●業務を遂行する手段として不適切

●回数、人数、手段が明らかに異常

 ただし、先にも少し触れたように、ある言動をパワハラと認定するには、さまざまな観点からの検討が必要です(【図1-3】)。

図1-3:パワハラ認定のためのさまざまな観点同書より転載 拡大画像表示

 具体的には、その言動を行った目的、経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、問題となる言動の内容、頻度や継続性、労働者の属性※1、心身の状況※2、パワハラを行う人(行為者)との関係性、被害により受ける身体的・精神的な苦痛の程度などを考慮して、総合的に判断されることになります。