パワハラの定義の構成要素(3)
「平均的な労働者の感じ方」が重要

 パワハラの要素(3)「労働者の就業環境が害される」というのは、行為者の言動によって、他の労働者が身体的または精神的な苦痛を感じて職場環境を不快と感じ、業務を遂行する能力が発揮できないなどの、悪影響が生じることを指します。

 ただ、人によって苦痛と感じる程度には差があることから、パワハラと認定するには「平均的な労働者の感じ方」を基準とする、とされています。つまり、同じ言動を社会一般の労働者が受けたときに、就業する上で看過できないほどの支障が生じるかどうか、が重要ということです。

 頻度や継続性も考慮されますが、著しく強い言動の場合は1回でも就業環境を害すると判断されることもあります。

 また、行為者1人に対し、複数の人が被害者となることも考えられます。

 たとえば日常的に大声で人を罵倒したり、暴力的な行為を繰り返す人が職場にいて、「怖くてもう会社に行きたくない」と何人もが訴えるほどの状況であれば、「職場の安全配慮義務」(労働契約法第5条)の観点から、会社が行為者を処分することもあり得ます。

 ある言動についてパワハラの訴訟に発展したときに、どこまでが許容範囲内でどのような言動がパワハラと認定されるかは、実際の状況(態様・頻度・回数・程度・持続性など)によって異なるので、一律に基準を設けることは難しく、ケースごとに法的根拠に照らして裁判官が判断することになります。