日本のマンションは「建物と居住者の高齢化」という二重の課題に直面している。建て替えのハードルは高く、年金暮らしの高齢者にとっては修繕積立金を捻出するのも厳しい状況だ。その結果、残った住人へしわ寄せがいき、設備の劣化が進んで資産価値も低下。空き家が増え続けるという負のスパイラルから抜け出せなくなっている――。※本稿は、河合雅司『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)の一部を抜粋・編集したものです。
建物は老朽化し住民は高齢化
マンションにおける「2つの老い」
住まいから見える日本崩壊の1つのシグナルは、マンションの老朽化である。半世紀以上にわたって急増し続けてきたマンションだが、いまや建物としての老朽化と居住者の高齢化という「2つの老い」に直面している。建て替えのハードルは高く、このままでは都市に廃墟のような建物が乱立する可能性もある。
国土交通省によれば、2022年末時点のマンションのストック総数は約694万3000戸であり、このうち約125万7000戸が築40年以上だ。
築40年以上のマンションは大幅増が見込まれる。国交省は2032年末に2022年末比で約2.1倍にあたる約260万8000戸、2042年末は約3.5倍にあたる約445万戸に達すると推計している。
社会全体の高齢化に伴い、居住者の年齢も上がってきている。
内閣府の「高齢社会対策総合調査」(2023年度)によれば、持ち家の分譲マンションに住む高齢者は8.3%である。国交省の調査によれば、世帯主が70歳以上の割合は「築40年以上」では48%、「築30年~40年未満」が44%と半数近くだ。「築20年~30年未満」も23%である。