しかしながら、賃貸の場合には高齢者の入居を拒否する物件が少なくなく、高齢者の住宅探しは難航が予想される。国交省によれば、賃貸人(大家)の66%が拒否感を抱いている。他の入居者とのトラブルや、家賃の滞納、居室内で孤独死し“事故物件”となることなどへの不安があるためだ。

書影『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)
河合雅司 著

「高齢社会対策総合調査」(2023年度)は65歳以降に入居を断られた経験のある人について調べているが、離婚して単身となっている人や世帯収入が120万円未満の人の割合が高い。高齢であるだけでなく、万一のときの身元引受人がいなかったり、家賃の連帯保証人が見つからなかったりということなどが理由だ。

 老朽化したマンションはいずれ建て替えなければならない。「厳しい選択」に頭を抱え先送りしているうちに、そこに住む人々の暮らしぶりや家族構成は変化を続けていくということである。

 今後は1人暮らしだけでなく、高齢者夫婦のみという世帯も増えていく。人口減少社会においては、空き家の増大やマンションの老朽化といったひとつひとつの課題への対応だけでなく、「住宅弱者」である高齢者の住まいをどうしていくのかという視点を持って根本的な対策を考えなければならない。