マーケティングに特殊な理論は存在しません。あなたが買い手であるときにはすべて知っていたり感じていたりすることであり、その当たり前のことを体系化したのが「マーケティング」なのです。
ここで少々戻って、「マーケティングとは何か」ということを確認しておきましょう。マーケティングとは、本質的には「顧客にとっての価値(=うれしさ)」を提供し、その対価として、顧客からお金をいただくこと。
少々学問的に言えば、「価値のやりとり」です。売り手が、製品・サービスなどを通じて買い手である顧客に価値を提供する。ドリルで言えば「穴を開ける」という価値を提供する。顧客は、お金などを売り手に支払ってドリルを手に入れ、穴を開ける。
マーケティングにおいては、このことが一番重要です。どんなに難解なマーケティングの本に書いてある知識や技術、テクニック論も個別具体論であり、この「価値」がマーケティングの中心概念だと覚えておきましょう。
あなたの商品がもたらす「何かいいこと」
あなたが何を売っているかということについて、もう少し考えてみましょう。もしあなたが果物屋さんだとすると、売り物は「果物」かもしれませんが、実際は「果物」がもたらす価値を売っています。
一方、お客様が買った価値とは、果物によってもたらされる「何かいいこと」です。たとえば、「料理しないで食べられて、しかもヘルシーな朝食」や、「夕食の後の、さっぱりしたデザート」などですね。
実は果物屋さんは、「手軽でヘルシーな朝食」屋さん、「さっぱりしたデザート」屋さんであるともいえるのです。そしてその「手軽でヘルシーな朝食」「さっぱりしたデザート」こそ、あなたがお客様に提供しているベネフィット(=価値=うれしさ)なんです。
ヘルシーな朝食屋さんであれば、ヨーグルトやできたてのフルーツジュースを一緒に売ってもいいですよね? デザート屋さんであれば、コンデンスミルク、チョコレートシロップなどを売ってもいいですよね?
「何を売っているか」によって、果物屋さんが売上げアップのためにやるべきことは変わってくるのです。