成年後見制度は
法定後見と任意後見の2種類

 成年後見人とは、認知症だけではなく知的障害や精神障害などの症状がある方に代わって「法律行為」を行える人を意味する。

 成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類がある。任意後見は本人に判断能力があり、将来に備えて本人の意思で契約するものであるのに対し、法定後見は、すでに判断能力が不十分である方向けの制度である。法定後見には「成年後見人」・「保佐人」・「補助人」の3種類があるが、相続の際は遺産分割などにおいて高度な判断が欠かせないため、全ての法律行為に対して代理権を持つ成年後見人が必要となる。

 保佐人も相続人に代わって相続に参加することが可能だが、付与されているのは民法に定められた行為を行う際に必要な同意権であり、代理権については家庭裁判所の審判が下りなければ付与されない。相続時には預貯金の解約や不動産の取得なども行う必要があり、保佐人にはできないことが多いため、成年後見人を選任することが妥当だ。

 成年後見人が必要となった場合、必要となった方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行う必要がある。申し立てから選任までは1~2カ月の期間を要し、この間は遺産分割協議を終えることはできない。

 医師による診断書などの必要書類をそろえ提出すると、家庭裁判所による審問や調査が始まる。判断能力については鑑定が行われることも多く、さまざまな調査の結果や現在の本人を取り巻く環境を踏まえて、家庭裁判所が適任と考える成年後見人を選ぶ。申立時には成年後見人に選んで欲しい人を家庭裁判所側に伝えられるが、希望が通らないケースも多い。