スキルは教え切れないが、課題解決の現場に立ち会うことでその姿勢は伝わる

──濱口さんが緻密に計画を組み立てれば成功の確度は上がるかもしれませんが、濱口さんが抜けた後、成功を再現できなくなりませんか。

 コンセプトは1人で考えることが多いし、「商品企画の人」だと勘違いされることも多いんですが、実際にやっていることの大半は、クライアントチームと一緒になってあらゆる問題を乗り越えて実行することです。そして、担当ビジネスのエキスパートは僕ではなくクライアントです。チーム全員であらゆる方向から考えてバイアスを壊せば、「こういうやり方があったのか!」という解決方法は必ず見つかります。こうした経験を繰り返すことで、結果的に「どんな問題もユニークであるが、どんな問題も必ずユニークに解ける」という僕の信念が薄く広く搭載されていくことは多いと思います。

──人材育成まで担当することもあるのでしょうか。

 今はありませんね。人材育成を目的にすると時間がかかるから、スピードが落ちてビジネスのゴール達成が危うくなってしまう。これまで仕事してきた海外企業の多くも「課題解決だけでいい」というスタンスです。ただ、日本企業からは「せっかくだからノウハウやスキルも学びたい」と言われることが多い。でも、人に教えるって難しいんですよ。

 会社員時代にも「君のやり方を社内に展開しよう」と言われて、手法化や複製にチャレンジしましたけど、あまりうまくいかなかった。僕自身が進化し続けているから、手法化しようとした瞬間、自分がすでにそこから遠ざかっているというのがつらい。

 まあ、人に何かを教えるより、新しい課題解決に、なるべくたくさん取り組み続ける方が圧倒的に楽しいっていう僕のわがままかもしれません。

 でも、一緒に仕事をしたチームが「どんな問題でもユニークに解決できる」というマインドセットになれることは大きいですよ。2回、3回と一緒に課題解決すると、「どんな時もなんとかなる」って空気ができて推進力が高まります。

──今回のワークショップは、6時間ずつ2日間にわたって、参加者から濱口さんに自由に質問を浴びせ掛けるという内容です。人材育成はしないという濱口さんのコンサルティングの現場を疑似体験できる貴重なものになりますね。

 そうですね。事前準備なしのぶっつけ本番で、どんな質問にもしっかりと答えていきたいと思います。業務上の課題解決でも個人的な悩みでも何でもいいです。金網デスマッチ的に、クエスチョンだけを武器に戦いを挑んできてください。僕の武器もアンサーだけです(笑)。

──濱口さんでも答えに詰まるぐらいの質問が出てくることを期待したいですね。

 望むところです。難しい質問も、困った質問も歓迎します。でも、最終的にはビジネスでどんな発想をすればいいのかというところに帰着させたい。僕には、日・米・欧の大小さまざまな企業で通算1000以上のプロジェクトをやってきたノウハウや経験があります。もし、すごい質問が飛んできてノックアウトされたとしても、リング上の血しぶきからお互いめちゃくちゃ滋養が得られると思います。刀やら、関ヶ原やら、金網デスマッチやら、血しぶきやら、物騒なことを言いましたが、ビジネスは命を失うことのない戦いです。存分にやり合いましょう。

【お知らせ】10/29(火)、10/30(水)の2日間にわたり、濱口秀司さんのワークショップ「[QXA]問題解決へのダイアローグ 2024」が開催されます!(詳細・申込みは こちら から)