TOPIX構成企業のうち、半数程度の企業のPBRが1倍割れで推移していることから容易に推察できるものの、念のためにTOPIX構成企業のPBRの中央値の推移を示したのが図5-10である。やはりPBRの中央値は1倍前後で推移している。

図5-10:PBRの中央値同書より転載 拡大画像表示

 では、PBRが1倍を割るとは、何を意味しているのか。その企業に不良資産(極端な表現を用いると、ゴミ同然の資産)が多いわけではない。

 結論から先に述べれば、企業の経営が株主の期待に応えていないからである。別の表現を用いると、事業の利益率(ただし株主が評価した率)が、株主が要求する資本コストを満たしていない。要するに企業経営が株主にとって期待はずれの状態にある。

 ここで資本コストとは、企業に提供した資本(株式、社債、貸出などの形態で企業に提供した資金)に対して、投資家が要求するリターン(株式に対する期待リターン、社債や貸出に要求する金利)である。

資本コストを推計する代わりに
活用できるのが「PBR」

 金利の場合、当初の契約によって利率が決まる。それが投資家の要求するリターンであり、誰の目にも明確である。これに対して株式の場合は配当(インカムゲイン)への期待に加え、値上がり益(キャピタルゲイン)への期待がある。いずれも期待値であり、明示されることはない。この株式に関する資本コストは、投資理論などに基づいて推計は可能だが、いくつかの仮定を置かなければならず、正確な数値は誰にもわからない。