開発陣は、「RSは、思いどおりに操る喜びを気軽に体験でき、運転することで心が昂ぶるクルマ。最新技術で誰でも楽しめるようにした進化型MTスポーツです。爽快なドライビングとともに、所有する喜びも追求しました」と説明する。
シビックには、すでに走りの象徴としてタイプRがある。ニューカマーのRSはクルマ好きに向けた、新たな選択肢。日常的にクルマの楽しさを満喫したいというドライバーへのプレゼントである。
RSは軽量フライホイールを採用
専用足回りで意のままのハンドリングを実現
現行11代目シビックをざっと振り返っておこう。日本で発売されたのは2021年9月。日本仕様はハッチバックのみで、1.5L直噴ターボ搭載車が先行デビューした。CVTだけでなく、6速MTもラインアップされたことが話題を呼ぶ。約1年後には、e:HEVとタイプRが相次いで加わった。
標準仕様のガソリンとMTの組み合わせは、やや期待はずれだった。今回、確認のためRSと同じ条件で乗り比べたのだが、ドライバーズカーとしてはいまひとつ。だが、RSではほぼすべてが改善されていた。
標準MTで最もいただけない点は、アクセルオフ時のエンジン回転落ちが遅いこと。アクセルを戻してエンジンブレーキがかかっても減速感が小さく、シフトダウンしようとクラッチを操作しアクセルを踏んでも、エンジン回転が上がりにくくてかつ下がりにくかった。だからシフトのタイミングを把握するのは至難の技だった。
RSは軽量フライホイールを採用。同時にエンジン制御をリファインした。レスポンスは回転が下がる側で50%、上がる側で30%向上。自然な感覚でストレスなくシフト操作ができるようになった。
加速フィールも改善されている。標準MTは5000rpmあたりからややガサツな印象を感じたが、RSはよりスムーズに気持ちよく吹き上がる。エンジン自体には手を加えず、フライホイールだけでこんなに変わるとは驚いた。
RSはレブマッチシステムの採用も新しい。レブマッチシステムは誰でもプロドライバーのようなシフトチェンジが可能となる機構である。本気で攻めるともう少し素早く応答してほしいと感じるシーンもあったが、タイプRではなくRSなのだ。この設定は適切である。
ドライブモードは、スポーツ/ノーマル/ECO/インディビジュアルの4種。モード選択によりエンジン、ステアリング、メーターの設定が変わり、スポーツモードを選ぶとよりダイナミックな走りを約束する。インディビジュアルモードが追加されたのもRSならではである。
RSはハンドリングもいい。専用サスペンションとステアリングシステムを組み込んでいる。具体的には、足回りは車高を5mm下げ、スプリングとスタビライザーを強化。ロール剛性を11%高め、ダンパー容量を拡大して微低速域から減衰力の応答性を向上させた。フロントコンプライアンスブッシュは液封からソリッドラバー化。電動パワーステアリングは、トーションバーレートを60%高めている。