京もみじの代名詞「永観堂」圧巻の紅葉体験
最後に、京もみじを代表する定番「永観堂」も押さえておきましょう。市バス「南禅寺・永観堂道」停留所から徒歩3分、見頃は少し遅めの11月下旬となります。平安時代中期の853(仁寿3)年に創建され、その半世紀後には『古今和歌集』に詠まれたというほど古くから「もみじの永観堂」とたたえられてきました。清々しい青もみじももちろん素晴らしいのですが、真紅に染まる秋にも心を揺さぶる絶景が待ち受けています。
京都随一のもみじ名所だけあり、紅葉シーズンには拝観受付の前に大行列ができるほど。広々とした境内一円に林立するもみじの木は3000本! 清水寺が1000本、東福寺が2000本ですから、樹木の本数だけでも圧巻。境内が人でいっぱいでも、紅葉を間近に感じながらそぞろ歩くことができます。
永観堂のもみじの魅力は、山肌や伽藍に寄り添う紅葉を見上げたり、多宝塔前から境内を見下ろしたり、枯山水庭園と紅葉との共演や池に映る紅葉をめでたり、ありとあらゆる眺め方で変化に富む紅葉を楽しめる点にあります。さらに、訪れる者を慈悲深く包み込んでくれる「みかえり阿弥陀」にも会えますので、満足度も圧倒的といえそうです。
永観堂の紅葉を一目見ようと気合みなぎる人たちが朝の開門直後の午前9時台に集中します。その後、観光バスで訪れる団体ツアー客も徐々に増えてきますので、受付終了の午後4時より少し前に境内に入り、5時の閉門まで満喫するという策がおすすめです。
この界隈で一日過ごすなら、今年浄土宗開宗850年を迎えた法然上人ゆかりの法然院や安楽寺とセットにして巡るといいでしょう。カフェタイムは、哲学の道のひと筋西側の鹿ケ谷通にある洋館カフェ「GOSPEL」へ。2024年に召天60年、25年に来日120年を迎える建家ヴォーリズの意思を継ぐ一粒社ヴォーリズ建築事務所によるクラシカルな空間で、心ほどける時間を過ごしてください。
最後に、もみじに冠するうんちくのおさらいを。植物学上「モミジ科」や「モミジ属」は存在せず、「モミジ」も「カエデ」もすべて「カエデ属」に分類されるそうです。草木が色づく様子を表す古語「もみづ(紅葉づ・黄葉づ)」という自動詞が「モミジ」の語源で、それが転じて、赤く色づくカエデを「もみじ」と呼ぶようになったようです。