「『総合評価2.9』…低っ」
「あー、もう!コメント欄ですよ!」
「ああ、これか…『3番窓口にいつも座っている向坂って女。こいつはひどい。こっちは客なのに、敬語のひとつも話せない無能女。こんなヤツを採用したM銀行採用担当の顔が見たいわ』。ひどい言われようだな」
私たちは、左胸に名札をつけなければならない。電話に出れば名乗らなくてはならない。自分の名前を見知らぬ相手にさらけだす行為に、抵抗を感じる行員も少なくない。
敬語が使えないのであれば、社会人としての基礎がなっていないということだ。社員教育の不行き届きを批判いただければ、しかるべき立場の者がしっかり謝罪し、真摯(しんし)に受け止めて改善するのが組織としてあるべき姿だと思う。だが、その猶予すら与えてもらえない。
「でしょ?マジ、ヤバくないですかー?彼氏からこの書き込みを教えてもらって、あたし、目が点…」
「君のそういう話し方がさ、お客さんにも伝わってしまうんじゃないかな」
「でもですよ。言いたいことがあったら、なんで直接クレームつけてこないんですかね?」
「こんなの書き込まれたら嫌だろ?だったらまずは言葉遣いを直さなきゃ」
「だって『M銀行みなとみらい支店の向坂』って書かれても、誰も覚えてないですよ。気にしないことじゃないですか?あたしのこういう性格、彼氏も『好きだ』って言ってくれてます」
「それはそれは、どうぞご勝手になさって下さいね」