ダンラップの経営手法は、次々に従業員を解雇して、不必要(だと無理やり判断させるのですが)な工場を閉鎖し、ダウンサイジングしてコストを圧縮することで、結果的に利益が積み上がっているように見せる、というものでした。

 あまりにも誰かれ構わず解雇していくことから、電動のこぎりのように首を切るという意味で「チェンソー・アル」というあだ名がつけられたほどです。

 しかも、ダンラップ自身が部下のクビを直接的に宣告するわけではありません。自分ではほとんど手を下さず、部下を使って解雇の宣告をしていくのです。可能な限り自分の手は汚さず、部下を悪者にしていく点も彼の特徴です。

 ダンラップのサンビーム社の様子は、アメリカのジャーナリスト、ジョン・A・バーンによる『悪徳経営者――首切りと企業解体で巨万の富を手にした男』(日経BP社、2000年)に詳しく描かれています。

 たとえば、ダンラップは自分自身のイメージをよくすることを優先し、ゴタゴタして問題の多い私生活についてはほとんど公にしていませんでした。また、過去の実績や経験、経歴を捏造したり誇張したりして吹聴する場面も多かったようです。そして支配欲が強く、短気で、いったん怒りに火がつくと手がつけられなくなることを、一緒に働く誰もが知っていました。