実際、疑い出すと「黒い服の若い男が、町を徘徊しては様子を見ている」「若い黒人(ただし学生風で理知的な顔立ち)の4人組が、ゴミの缶をビニール袋にいっぱい入れて運んでいたから、資源ゴミ泥棒じゃないか」「自転車に乗った男が、自宅を10分ほどずっと眺めていた」などという、近所の噂話が耳に入ってきます。

「住人同士が挨拶をしている街の家には、まず泥棒は入らない」と元警視総監の講演で聞いたことがあります。昼と夜には町内でパトロールをしているし、ほとんどの家が犬を飼い、門灯もつけ、監視カメラも多い。その意味では防犯意識はしっかりした町なので、生命の危険を感じるようなことはなく、ある意味、コミュニティがしっかりでき上がっており、「挨拶ができる安心な街って、こういうところだろうな」と安心していたのです。

日本の犯罪は別次元に突入
急がれる治安対策の発想転換

 しかし、今回の「トクリュウ」は防犯の必要性が別次元に入ったと考えるべきではないでしょうか。たとえば青葉区の殺人は、同一犯と思わる犯罪がどんどん明るみに出て首都圏で15件に及び、他にも栃木と札幌で類似した事件が発生していると判明。埼玉、千葉、神奈川に警視庁と警察庁の合同捜査本部が設置されました。これまでに判明しているのは、強盗致傷が10件、強盗殺人が1件、それ以外は強盗予備、窃盗などだそうです。

 私はこのニュースを見た時点で、地域の治安対策を完全に転換しなければいけないと感じました。もう日本を「治安のいい国」などと言ってはいられません。性善説が前提となっており、財布を落としても交番に行けば届けられており、お巡りさんが近所とコミュニケーションをとるような時代ではなくなったのです。政府は防犯カメラ設置への補助や相談窓口の開設などの対策を打ち出しましたが、そんな生ぬるいものでは、今回のような犯罪は根絶などできないと思います。

 私は治安対策の抜本的な強化を提案したいと思います。まずは日本の警察を、かつて暴力団を暴対法でほとんど根絶したような強い法的根拠を持つ警察へと、作り直す時期がきているということです。今回も広域捜査本部ができましたが、殺人が10日に発生したのに立ち上げは18日になってから。最初から「トクリュウ」に関わる犯罪は広域であることがわかっているのだから、もっと早くから全国規模で捜査体制を組むか、特別チームをつくるといった対策が必要だったのではないでしょうか。