振り込め詐欺(以前は「オレオレ詐欺」)は、1990年代に社会問題化し始め、2004年に警察庁が「振り込め詐欺」へと名称を統一しました。2004年の振り込め詐欺の被害額は約280億円でしたが、2014年には約565億円に増加。「ルフィ」などの黒幕が海外で逮捕された2024年においても、被害額は約452億円と推定されています。つまり、暴力団は衰弱しても、半グレや暴力団崩れが関与した闇バイト、振込詐欺の受け子など、お金のない若者をテレグラムなどの匿名性の高いシステムを使って動かす組織は存続し続け、元締めがわからない形で犯行を過激化させているという状況ははっきりしています。

「振り込め詐欺」さえ撲滅できない
日本の警察の不安な実情

 しかし、旧態然とした組織や法律のままで、「振り込め詐欺」を何十年も解決できないのが今の警察なのです。今の組織や法体系では、これに対抗するのは無理であり、政府はこのリスクをもっと重大視した立法と組織変更を行う必要があるのではないでしょうか。

 たとえば、米国は9.11で国家を揺るがすほどのテロ被害を受けましたが、その後、国家情報長官を新設し、テロリスト情報の共有の円滑化や国土安全保障局を使った盗聴を強化し、結果として20年以上にわたって大規模なテロを防止しています。被害の規模は違うとはいえ、イスラム諸国のテロリスト同様、日本の「トクリュウ」には時代背景を見ても出現する理由が存在します。

 小泉純一郎、安倍晋三の両内閣で新自由主義的改革が行われ、格差社会が現実となりました。最初は限定されていた派遣社員の範囲がどんどん拡大され、20代の平均貯蓄額は2000年には約131万円だったものが、2020年には約72万円へと減りました。若者が貧乏であることが、裏バイトが増え続ける根源的な原因であり、彼らをリスクなしに利用できる黒幕が生き延び続ける原因です。日本を支える治安という重要なインフラを壊すテロリスト的存在であると「トクリュウ」を認識した上で、新しい組織、法律を考える必要があるのではないでしょうか。

「日本の警察は優秀」と国際的にも評価を受けています。実際、1990年は犯罪数が約250万件に対して検挙率が約60%、2010年は同150万件に対して同30%、そして2020年は同約70万件に対して同約40%となっており、犯罪数、検挙率ともに良好と言えます。

 しかし実際には、検挙率は自転車泥棒を取り締まればすぐ増えます。私の取材経験では、警察は現場で事件を追うよりも昇進のための試験に熱心で、市民の訴えをなるべく事件化せずに葬り去ろうという傾向の組織であることも事実なのです。もし今回の事件も広域捜査本部ができなかったら、強盗予備に分類されていた犯罪は「トクリュウ」犯罪と位置付けられていなかったかもしれません。