本当は「トクリュウ」をマフィア同様の組織と認定し、暴対法の対象にするだけでなく、いわゆる「盗聴法」(正式名:通信傍受法)の対象を拡大し、テレグラムの完全使用禁止やダークウェブまで監視する権限を、警察に与えるべきではないでしょうか。

 米国は国家安全保障局(NSA)による「エシュロン」と呼ばれる通信傍受システムで、テロを相当数未然に防ぎました。日本の盗聴法も、2016年の改正でそれまでの薬物・銃器・集団密航・組織的犯罪しか認められていなかった傍受の範囲が拡大され、傷害、爆発物使用、放火、誘拐、監禁、窃盗、詐欺、児童ポルノなどが加えられ、傍受についても「通信会社に出向く」のではなく「警察が必用とする日数分の通話の圧縮データを通信会社から送ってもらい、立会人なしで警察がデータの検証を行える」ように改正されました。

 もちろん、個人情報を大事にして人権を養護する団体からは、疑問の声が多く出ましたが、これだけ「トクリュウ」犯罪が過激化し、しかも海外からの指示やお互いを知らない闇バイトメンバーの犯行など犯罪が流動化している現実を見れば、彼らの通信網や連絡網を把握できるよう、即応できる仕組みを考える必用があると思います。

過去の日本を取り戻すには
トクリュウ対策を徹底せよ

 私は警察を全面的に信用し、権力の濫用を心配しない人間ではありません。しかし、今日のような犯罪の多発化、過激化、単純化は社会情勢の変化と共に起こっているものであり、それには何よりも国民の安全が優先されることが大事です。

 たとえば、「トクリュウ」犯罪撲滅の目標を3年以内と警察に決めさせ、3年の時限立法で特別な盗聴許可を出したり、闇バイトで犯罪を唆された人物が警察に事前に名乗り出た場合、報奨金などを出し家族を保護する施設をつくったりすることも検討すべきでしょう。

 石破総理は自民党総裁選の立候補演説で、過去の日本についてこう追憶しました。

「今ほど豊かではなかったけれど、そこには大勢の人の笑顔がありました。(略)もう一度そういう日本を取り戻したいと思っています。互いが悪口を言ったり足を引っ張ったりするのではなく、共に助け合い、悲しい思いでいる人、苦しい思いでいる人、そういう人たちを助け合うような、そういう日本にしてまいりたいと思っております。日本を守りたい、国民を守りたい、地方を守りたいのです」

 まさに「トクリュウ」の撲滅、闇バイト志望者の激減こそ、かつての仲のいい日本人社会を取り戻すチャンスなのではないでしょうか。全身全霊をかけ、全力で警察を叱咤し、必用な法律という武器を与えて、「かつての日本人の笑顔」を取り戻してほしいと考えます。

(元週刊文春・月刊文藝春秋編集長 木俣正剛)