診察していると、女性の患者さんが多い印象です。発症年齢のピークは10~20代ですが、診察をしていると30~50歳ぐらいの方が多いですね。なぜかというと、以前は医師が化学物質過敏症を認識していないので、色々な診療科をいわゆるA“ドクターショッピング”することになったり、アレルギーと誤診されて間違った治療を受けて治らなかったりというケースが多かった。その期間が10年ぐらいという方も珍しくなかったので、タイムラグが起きているのです。

 今は病名が認められ、この病気の啓発が昔より増え、早期に診断されるというケースも出てきています。

潜在患者は1000万人以上?
合併症も誘発する厄介な症状

――著書の帯には「潜在患者は1000万人以上」と書かれていて、ドキッとします。

渡井 脳過敏の素因がある人はなりやすいわけで、海外の疫学データを考えると、それに該当する方はおそらく1000万人以上いてもおかしくないと思っています。

 心配な方は、この本に症状のチェック項目を掲載しておきましたので、試してみてください。もし当てはまったら、「化学物質過敏症かどうか気になって来ました」と言って受診すれば、遠回りせずに正しい診断にたどりつけるはずです。

――治療方法ですが、まだ化学物質過敏症の根治薬は開発されていないんですね。

渡井 残念ながらそうなんです。今は症状に合わせて対応をします。化学物質過敏症と一緒に併発する合併症を抱えている患者さんが多いのが特徴です。

 例えば片頭痛や、腸にこれといった疾患がないのに、ストレスがかかると腹痛や下痢を繰り返す過敏性腸症候群、慢性疲労症候群、体のどこかを少し触られるだけで飛び上がるぐらい痛みを感じる線維筋痛症といった病気です。これらを治療することで、化学物質過敏症の症状も改善されることがあります。だから、複数の診療科の力も借りながら治療することがあります。